HOPEACE | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

prev / next
[ mokuji / bookmark / main / top ]

7.


俺は何がしたいんだろう。

魔獣の正体を知る前だったとはいえ、俺だってさっきまでは魔獣を殺していて、ただ理不尽にケルベロスだけを責めている。

知っている。知っているんだ。

魔獣は二度と聖獣には戻れない。元に戻す、助ける方法なんてないし、放置したり見逃したりすれば無関係な町人が殺されてしまう。そんなことは、もうとっくに分かっている。

ケルベロスは正しい。今、俺達が打てる最善の、そして、唯一の一手は、たとえどれだけ無慈悲だろうと魔獣を殺してしまうことだ。

彼は言っていることも、やっていることも正しい。なのに、俺は割り切れなかった。

『力でしか解決出来ないなら、…あんたなんか王になるべきじゃなかった!!』

ケルベロスが一瞬だけ目を伏せた。

『…そうだなぁ、貴殿の言う通りだ』

ひどいことを言っている自覚はあった。だが、それでも彼の口から放たれる低い声に苛立ちはなくて、代わりに悲しさを帯びていた。

『それでも、殺さねばならぬのだよ』

『っ!?』

ケルベロスが起き上がる。また魔獣に向かっていくのが目に入って、俺も後に続いた。

周囲の気配を探ると、魔獣はもうあのヒッポグリフ一体しか残っていないようだ。俺とケルベロスも結構殺したが、他はイチル達が片付けたらしい。

あのヒッポグリフだけは、死なせたくない。

大事な大事な友人なんだ。

簡単に迷子になるちょっとドジな子で、一人にすると耐えられない寂しがり屋で、泣き虫で、寝相が悪くて、それでもとても優しくて、穏やかで、温かくて、いい子なんだよ。だから、

(どうか殺さないで!!)

[ 169/656 ]
prev / next
[ mokuji / bookmark / main / top ]

王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。