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6.


ケルベロスが次の標的に移る。

その魔獣は見慣れた姿をしていた。

色は違うものの、見間違えるはずもない。馬に似た大きな体、後ろ足の蹄、前足の鉤爪、逞しい翼、鷲によく似た顔と嘴。

少し前まで漆黒の羽は淡い灰色をで、赤い目は柔らかい鳶色をしていた俺の大事な大事な、…友人。

ケルベロスが牙を剥く。口を大きく開いて、飛びかかっていく。それがスローモーションに見えて、胸が張り裂けそうに痛かった。

『ダメだ!!』

気が付けば、飛び出していて。

気が付けば、肩に激痛が走っていて。

ケルベロスは意表を突かれたのかもしれないし、単純に俺のスピードについてこれなかったのかもしれない。とりあえず、反応が遅れてしまった彼の牙は深々と俺の右肩に刺さっていた。

勢いを殺せずに地面に叩きつけられ、そのまま二人で転がっていく。激しく砂埃を巻き上げながら硬い地面の上を掠り、転がる激痛に思わず顔を顰め、奥歯を噛み締めた。

建物の壁に叩きつけられ、やっと止まった。骨が砕けそうな衝撃に、息が止まる。

『どういうつもりだ、風』

牙が肩から離れる。

真っ白い翼が赤く染まるのが見えたが、ケルベロスだって無傷では済まされなかったようだ。

『責任を取る…、それで殺すって、…あんたこそどういうつもりなの?』

思ったよりも冷静に声が出た。冷静だけではなく、氷のように冷たかった。

『あんたのとこの精霊のせいで暴走してるんでしょ?だったら、元に戻して助けてみせるのが責任の取り方ってもんじゃないの?』

『っ、』

『精霊のせいで暴走して、あんたがトドメを刺すって、…嬲って殺すのとどこが違うのっ!?』

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。