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3.


「ラニアについて教えて」

ヒッポグリフが顔を顰めるのが見えた。

『ラニアは昔は風の丘だなんて呼ばれてた綺麗な町なんだけど、…ここ一年は風に見放された町になってるの。風がね、死んでるんだよ』

「風が死んでる…?」

『馬鹿な人間がシルフ様を怒らせたから…』

風の丘と呼ばれるとおり、昔からラニアは穏やかな風で有名な町だった。いつでも優しい風が草木をなびかせ、絶えることなく風車が回っていた。

その理由はラニアには風属性Sランクであるシルフを祀る神殿があり、そこに住むシルフもまた人を愛し、風の力を民のために使っていたからだった。美しく、住みやすい町だった。

だが、それも一年前まで。

ちょうど一年前の秋、収穫の感謝を表す豊穣祭の時、毎年にもましての豊作に浮かれて喜んだ男がシルフの前でうっかり口を滑らせてこう言った。

シルフ様は神様だ、と。

褒め言葉に見えた一言は、シルフの逆鱗に触れた。シルフは風属性では第二位。長らく空位だった風の王に心配を抱きながらも決して存在を疑わなかった彼女にとって、それは風の王の存在を否定する言葉に聞こえた。神、神獣は王を指す呼び方だから。

シルフは怒り、風をとめてしまった。草木は動かなくなり、風車は止まった。雨雲を導く風すらなく、一年も雨は一滴も降らずに草木は枯れ果て、大地はひび割れ、去年に収穫した穀物も残りわずか。

辺境の地であるゆえに救援も難しい。

シルフが風を動かせば雨雲も戻って全てが解決するが、数百年も風の王に焦がれ続けた彼女は、人間達がどう謝っても首を縦に振らない。

数百年もの孤独の中で抱き続けた希望を否定された恨みは、あれだけ愛していた人間が飢えはじめる様子を前にしても晴れることはなかった。

『シルフ様も可哀想だよ。他の属性には王様がちゃんといるのに、…うちだけいないんだよ?』

「…何百年も?」

『そうだよ。王様来るの遅いよ!もう!』

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。