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- ナノ -


12.


エルミックがゼノを好きだと知ったのは、先日のサバイバルゲームの時だった。

頑張れと思った。ゼノが新しい恋に踏み出せたのも、その恋に本気なのも嬉しかった。さらに、エルミックの想いが報われたのだと知って、本当に嬉しくなった。

「やっと大尉か…」

ゼノが大尉になったと知っている。

ゼノからダイヤを奪った時、彼自ら教えてくれた。驚いたが、やっと実力に釣り合う位を得て本当によかったと思う。

俺の副官であり続けるために少尉という低い位に甘んじていたゼノは、佐官としても充分通用する実力を持っているし、中尉を飛ばして一気に大尉に昇ることも容易だ。

枷だった俺もいなくなり、恋人ができたことによって身を固め、昔のように娼館に入り浸ることもなくなっただろう。その悪癖さえ抜ければ、文句は付けられない。

嬉しかった。

親友の実力が認められることが。

ゼノが船長となり、空いた副官の位置に准尉であるエルミックが収まった。情報班から海上保安班へと移動してきたのだ。

(なら、海鮮アレルギーは?)

それは分からない。

だが、あのエルミックのことだ。きっと既に手は打ってあるんだろう。

俺は海軍を離れたが、ゼノのことが唯一気がかりだった。一人置いてきてしまった親友がどうしても頭から離れなかった。

だが、今のこの状態なら、恋人がエルミックなら、二人が相思相愛なら安心できる。

エルミックの実力は俺がよく知っている。ゼノを危ない目に会わせることもないし、悲しませることも絶対にない。

ストン、と心の石が落ちた。

「おめでとう」

呟いた言葉は二人に届くだろうか。

声はきっと届かない。だが、唇を読んだゼノが俺に微笑んで、エルミックと左手の指を絡めながらゆっくり唇を動かした。

『さんきゅ、ロー』

たったそれだけの短いやり取り。

だが、それだけで俺は充分だった。

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