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8.


「絶対ぇに幸せにしてやる」

「当たり前だ」

リドが照れたように笑う。

それは春の花が綻ぶような、たぶん、出会ってから一番綺麗で優しい笑みだった。

それに釘付けになっていると、リドの顔がうっすらと赤くなってきて、俺から逃げるようにちらっと視線が空中にさまよう。

「…あんま見るな。照れる」

「ふは、照れるってお前が?」

「わ、悪ぃかよ!…ほら、離れろ。ノエルから手紙が来てるからそれでも読め!」

明らかに話題を変えられた。

だが、クウォーツ先輩からの手紙も気になったから大人しくリドから離れて、リドが懐から取り出した手紙を受け取った。

薄い茶色の封筒は蝋で封をされていた。蝋には梟の印を押されていたが、リドが既にペーパーナイフで封筒を開けていたから、その印を傷付けずに羊皮紙を取り出した。

きめの細かい上品な羊皮紙には、よく整ったクウォーツ先輩の筆跡があった。

「近況報告?」

「昨日、ノエルも恋人と色々あったらしい。…もちろん、いい方向で」

手紙の内容を読み進める。

キーツが南方の海上保安班を辞めたこと。だが、海軍を辞めたのではなく本部勤務でカインズ担当の沿岸警備班への移動届けを受理されたから、たくさん会えること。

本部にも自室ができるが、夜は宿に帰って余裕があれば手伝ってくれるとのこと。

キーツが手伝ってくれるのによって先輩に余裕が出てきて、キーツや友人の勧めにより海軍オーケストラ隊の非常勤指揮者として現場の復帰を決意したこと。

昨日の夜会にオーケストラ隊の担当者もいたから話をすれば快諾してくれ、明日にでも新しい軍服の採寸に行くこと。

上手く行けば来年の聖海祭でも指揮ができるかもしれないから、そうなった場合は俺とリドの二人で観にきてほしいこと。

今、最高に幸せであること。

そして、最後に俺とリドへの幸せを祝うメッセージで手紙は締めくくられていた。

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