7.
「は?…だってお前、約束守らねぇ男は嫌いだって言ってたじゃねぇか」
「俺を幸せにする方の約束」
「後悔しねぇって」
「お前と行くと決めたことにな」
「幸せに生きていく、って…」
「お前の隣で、だ」
勝ち誇ったように笑ってみせた。
状況が呑み込めずにリドは唖然としていたが、しばらくすると言葉の意味を理解できたようで半ば泣きそうになりながら、幸せを噛みしめるように綺麗に微笑んだ。
数歩でリドとの距離を縮めてその首筋に緩く腕を回して抱き付けば、僅かに震えた腕が恐る恐る俺の背中に回された。
「なんだ、信じられないのか」
「あぁ、信じられねぇな…。…俺は、夢でも見てるんじゃねぇかって思う」
「そのうち夢が覚めるかもな」
「それは嫌だ!」
「冗談だ」
リドは俺を手放すつもりがないといっても、無理矢理連れていくことに罪悪感はあったのだろう。その証拠に手が震えている。
カタカタと小刻みに震える彼を安心させるように首筋に擦りよれば、震えは徐々に落ち着いてきて、それと反比例するように俺を抱き締める力が強くなっていく。
リドの腕の中がとても落ち着く。
ずっと抱き締められていたい。
「安心しろ。お前を愛してるよ、リド。俺はお前と一緒に生きていくから」
「は、…すっげぇ幸せだ」
「俺もだ。あともう一つ。お前の船にずっといるつもりだから客になるつもりはない」
「それって…、」
リドの目が驚愕に丸まった。
「お前がいるところまで堕ちてやる」
海賊に堕ちる。
昔の俺なら全力で拒否していただろう。
だが、海賊といっても商船を襲ったり、強盗をしたり悪いことをする海賊じゃないし、何よりそこにリドがいると思うと、この言葉はあっさりと口から出てきた。
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