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2.


甲板にいる保証はない。

だが、海軍にいた頃、俺は甲板で日の出を見るのが好きで、リドもきっとこの美しい景色を一望できる甲板にいると思った。

白っぽい朝の空。朝日はまだ水平線から顔を出していないが、僅かな光は揺らめく海面によって反射される。昼の眩しさとは違う朝しか見れない宝石箱のような海。

まだ空が白んでいるだけなのに、少しばかり気の早い鴎(かもめ)達が元気に鳴きながら船の周りを飛んでいた。

風に雲が流れていく。それを追いかけ、追い越すように船が進む。

そして、甲板の見晴らしのいいところに俺の愛しい恋人の後ろ姿を見付けた。

足音で振り返ったそいつは、拉致行為に呆れた俺の心中も知らずに、俺と目が合うとそれは嬉しそうに微笑んだんだ。

「起きたか。おはよう」

「どういうつもりだ」

「別に?それより似合ってるな、俺の服。軍服よりよっぽど格好よく見えるぜ?」

「お前はせめて俺の服を近くに置いてくれ。…ってそうじゃなくて、俺を手放すって約束だっただろう。ダイヤだって、」

違う。これは本音じゃない。

本望だから手放しで喜べたが、リドがあの約束をどう思っているのか、ただ少しの好奇心から気になっただけだった。

だが、返ってきた言葉は以外にも普通だったが、妙に嫌な予感がしていた。

「覚えてる。約束は守るぜ」

ニヤリ、とまるで主導権を握ったようにリドが口角を上げて悪役のように笑う。

そこには昨日の夜にあった苦しさやら切なさやらは全くなくて、事は思った通りに進むとでも言いたげな自信があった。

「次の港で降ろしてやる」

「聞いてない」

「起こしたが、誰かが起きなくてな…。こっちも予定があるから出港した。だって起きなかった誰かさんが悪ぃんだろ?」

「嘘だ。気ままに航海するお前に予定なんか…。それに起こされてないぞ」

「よく寝すぎて気付かなかったんじゃね?」

「…そんなわけあるか」

いや、絶対に起こされてない。

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