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朝焼けと海


ぱち、と目が覚めて寝転がりながらまず思ったのは、やられた、の一言だった。

「あいつ…」

呟いた声がやけに苦々しい。

だって、船の揺れは港にいた頃より明らかに大きくなっていて、窓から見える景色に茶色い陸地なんてこれっぽっちもない。

夜明け特有の白っぽい空と、淡い朝日を反射しながら穏やかに揺れる海が見渡す限りどこまでも広がっていた。

(明らかに出港してやがる)

一緒に行く、とまだ言ってない。

なら、これは、

「拉致でしかないだろ」

頭痛すらしてくるようだ。

とりあえず、たっぷり眠って疲れを癒した体を起こす。後処理はきちんとされていて綺麗になった体はガウンを着せられていた。

そのガウンからリドの僅かに香りがして、だが、肝心の本人は隣にいなくて、空いたベッドのスペースはまだ温かい。

「…いい度胸だ」

どういうつもりか問いただしてやる。

というのは実は建前で、目が覚めて一番にリドの顔が見たくて仕方なかったんだ。

ガウンを脱ぎ捨てる。だが、昨日リドに破られた服はとっくに捨てられていて、俺の服もなかったから勝手にクローゼットを開けてリドの服を適当に取り出して着た。

まぁ、仮に昨日のドレスがあったところで、これ以上女装はしたくないから俺はやはりリドの服を着ただろうが。

ぶかぶかというほどでもないが、リドが着ればぴったりな服は俺にとって余裕がある。

袖をまくったりする必要こそないものの、いつもきっちりと服を着ていた俺にとってはこの少しだらしなく余裕のある感じが新鮮で、ラフさが気に入った。

白を着慣れた俺が黒いシャツを着ている姿が鏡に映って、少しの違和感を感じた。

その違和感もすぐになくなるだろうが。

息苦しいからボタンは一番上までとめず、デニムも勝手に拝借する。その姿で俺はリドがいるだろう甲板に向かった。

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