8.※
欲しくてリドの腹に内腿を擦り寄せれば、熱に染まったエメラルド瞳で見下ろされた。
ジ、とファスナーを下げる音がする。見れば、リドの下腹部はとっくに反応しきっていて、軍服の中で窮屈そうにしていた。
俺に欲情してくれるのは嬉しい。
だが、いくら破れていると言っても禁欲的な純白の軍服を着ながら反応しているその姿に、思わず吹き出せば、少しだけ恥ずかしそうに睨まれてしまった。
ほんの僅かに耳を染めたリドは、格好いいと同時にとても可愛らしく見えた。
「…笑うな」
「だって、可愛くて、…ひ、んぅ、」
「あぁ?なんつった?」
可愛い、との言葉が気に入らなかったんだろう。俺が言葉を放とうとすると同時に後孔を撫でてくるから喋るどころじゃなくて、鼻から抜けるような甘い息が出た。
思惑通り喋れなくなった俺を、リドは満足そうに見た。俺は悔しくなって、リドのそこを強めに膝で押し潰して見た。
きっとそれがいけなかったんだと思う。
愉快そうに笑っていた瞳に火がついた。
深緑色の瞳に欲望の炎が燃え広がり、穏やかさをなくしていく。その瞬間、俺の上でじゃれていた猫は、確かに獲物を押し付け、首筋に牙を立てる獰猛な豹になった。
「煽んなつったよな?」
見据えられて体が硬直する。
「自業自得だからな、てめぇ」
待ちきれない、とでも言いたげにリドの指が俺の後孔に伸びる。だが、指を中に入れようとしたところで苦々しげな表情で舌打ちをして、指を抜いてしまった。
「リド…?」
俺は気付くべきだった。
普段のリドなら、これだけ煽れば間違いなくすぐに俺の中に入ってこようとしただろうが、今回は渋々引いたんだ。
だって、中にダイヤが入っているといっても、浅い場所にあるからすぐに出せる。
おかしい。絶対に何かある。わざとなら舌打ちなんかしないだろうし、入りたいなら舌打ちする必要もなく入ればいい。
だが、その僅かな違和感に、本能の熱を持て余していた俺は気付けなかった。
この時、罠は既に張られていた。
[ 464/489 ]
[*prev] [next#]
[top][mokuji]
[しおりを挟む]