3.
「そんな顔をするな」
お前のものになるから。
だが、やはり足りない言葉では到底リドを慰めるべくことができなくて、仕方がないから俺は自らリドの唇に噛み付いた。
軽く下唇を甘噛みして、吸って、至近距離から最愛の人を見据えれば彼の肩が僅かに、ピクッ、と跳ねたのが見えた。
「…お前、獣みたいな顔してるぜ?」
「まぁ、確かに飢えているな。それに、男は皆獣なんだろ?海軍さん」
体が熱く疼き出す。
一度は諦めようと思った恋だった。
だから、リドを見ても平然を装えた。だが、覚悟が決まれば今まで抑えていたものが一気に溢れ出て、とまらなくなる。
「リド、お前が欲しくて…たまらないよ」
その言葉にリドが一瞬だけ呆然としたかと思うと、すぐに満更でもなさそうな表情になって、その顔すら俺は見惚れた。
そして、今度は俺が呆然とした間にリドが僅かに腰を屈めたかと思うと、膝裏と背中を抱えられて浮遊感に襲われた。
「う、わぁ、」
視線が少し高くなって。
リドの顔がグッと近くなって。
反射的にリドの首にすがりつけば、大きな黒猫はとても嬉しそうに喉を鳴らした。
「なんて抱き方をしやがる」
「レディにはぴったりだろ?」
「お姫様抱っこって…」
「俺にとってのお姫様なんだから」
そんな恥ずかしい言葉に顔が熱くなって、リドから顔を逸らしているとリドが少し歩き、そっと俺をベッドに下ろした。
ベッドの上で仰向けになった俺は、離れそうになったリドの首に緩く手を回して繋ぎとめた。ふっ、と吐息だけで笑った彼は本当に目を奪われるほど綺麗だったんだ。
「甘え上手になったな」
「お前にだけだ」
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