2.
「リド、…っ、何を考えている?」
唇同士が離れて息も絶え絶えだ。
リドの悲しそうな表情が見たくなくて端整な顔に指を滑らせれば、大きな手を重ねられて自ら俺の手に擦り寄ってきた。
「別に何も」
「嘘つけ。泣きそうだぞ。耳をペタッて伏せて拗ねている猫みたいになってる」
「んな、猫って…。…お前こそ、今俺が何を考えているかくらい分かんだろ」
「まぁな」
俺のことだ。
じゃないと、こんなにも強くて気丈な男が情けなく顔を歪めているわけがない。
すぐに花が綻ぶような笑みを浮かべさせたい。だが、とても近い未来でその微笑みはいくらでも見れるんだから今くらい情けない顔が見たい、と心の中の小悪魔が囁く。
(…とりあえず、もう少しだけ)
終わった後に話してやろう。
それよりも今は、
「お前は何も考えずに俺を抱け」
リドが欲しい。
愛しい人と半年も離れて、やっとこんな近くにいれるのにキスやらハグやらお遊びのスキンシップでは到底足らないんだ。
目の前にいるリドがとても素敵で、官能的なキスで体が疼き始めて、そして、格好いいもののやはり自由な彼に似合わない純白の軍服を剥ぎ取りたいと思った。
今から共に生き、航海していくリドに束縛の白なんて似合わないし、着せたくない。
だから、軍服に手をかけ丁寧にボタンを外そうとしたところで、思い改まった。
(どうせもう必要ないだろう)
律儀にボタンを外そうとした手で強く襟を掴んで思いっきり引き裂けば、ビリッ、と布地が裂ける嫌な音がして、飛んでしまったいくつかのボタンが床を跳ねた。
丈夫な軍服はそれだけで完全に破れはしなかったが、リドがもうこの服を着ることがないと思うと気分は晴れやかだった。
「やけに大胆だな。どうした?」
「最後だからな」
俺もお前も、軍服を着るのは。
だが、言った直後に、この発言がまたリドを勘違いさせると気がついて苦笑いをした。
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