2.
改めてリドを見た。
純白の軍服姿は初めて見る。
タキシードを着ていた時の優雅さは消え、いつもの野性的な笑みを浮かべていたが、憎たらしいほどに似合っていた。
(海賊のくせに…)
きっちりと閉めずに開け放たれた胸元からは鎖骨が見えて、喉仏も色っぽい。
なのに、シミ一つない軍服も白手袋も禁欲的で、腰に下げられた真剣が凛々しくて、どうしようもなく格好いい。
夜を切り取ったような艶やかな黒髪は軍服の白に引き立てられ、濃さを増したようだ。動きに合わせ揺らぎ、流れる。
軍帽の陰から見える鋭い深緑。
だが、それは俺と目が合うと、照れたように少しだけ細まって微笑んだ。
「いや、似合ってないな」
嘘だ。すごく似合ってる。
うっかりすると目が離せなくなってしまうほど綺麗で、惹き込まれる。
だが、不機嫌な表情をしながら俺の手に重ねた手でナイフを触るリドに、俺は焦って咄嗟に逆の言葉を言った。
「似合ってる!似合ってるから!!」
不機嫌な理由は褒めなかったからだけではなく、内緒で持ってきたナイフを見付けてしまったからでもあるらしい。
「んー?今更取り繕ってもなぁ…、悪いお嬢さんだ。嘘をつくし、持ってくんなつったナイフも持ってくるし…」
「リ、リドッ、」
「どうやってお仕置きしてやるかな」
楽しげな目にゾクリと背中が粟立つ。
顎を持ち上げられたまま逸らすことも出来ず、リドの目をまっすぐに見るしかない。
囚われたような感覚はますます強くなっていって、しばらくの見詰め合いの後、俺は大人しく負けを認めるしかなかった。
「俺が悪かったから」
「似合ってるか?」
「あぁ、似合ってるよ!」
「ナイフを渡せ」
「ほら、」
「…俺が好き?」
「誰よりも愛してるよ」
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