5.
※ゼノside
だが、思ったよりもエルが焦って、言葉を終えるか終えないかの時に噛み付いてきた。
少し前まではただの友達だと思っていた奴の唇が、降ってきて迷うことなく俺の唇に重ねられた。形がよくて少し薄い唇が、ぴたりと重ねられて視界がぼやける。
それは柔らかくて気持ちいい。
逃げるつもりなんてないのに、腰に腕を回されて後頭部を押さえられる。俺はごく自然にエルの首筋に両腕を回していた。
「んっ…、」
そして、舌が入ってきて水音がする。
熱い舌に口内をまさぐられて息を整えようと大きめに口を開いた瞬間、さらに深く舌が入ってきて翻弄されてしまった。
「は、…エ…ル…、ん、っぁ、」
舌を追いかけられて、絡められて、自分の口から出る水音に顔が真っ赤になっていくのを感じる。クラクラしそうだ。
キスの経験なんて腐るほどあるのに、与えられる刺激を受け入れるしかない。
受け身のキスなんて初めてで、だが、エルにキスを仕掛けようなんてとてもじゃないが無理そうに思えてしまった。
(やべ、…気持ちいい)
背中がぞわぞわする。
足腰に力が入らなくなって気づけば、ドン、という背中への衝撃と共に壁へと押し付けられていた。太股の間に膝が割り込む。
腰を抱いていた手は壁につけられ、もう片方は優しく俺の頬に添えられていた。
深く深く交わる口付け。
蜜を啄んでいるように甘かった。
何度も何度も絡む舌。下唇が甘く食まれる。痺れる思考に背中をわななかせて、吐息さえも貪られて消えた。
もっと、と強請れば笑う気配がする。そして、強請った通りにさらに与えられたキスに酔いしれて、溺れるしかなかった。
「ッはぁ、エル…!」
この幸せな時間に。
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