24.
「はっきり言い切ってやるぜ、ローウェン」
エルミックが俺を強く見据えた。
その強い眼差しに動けなくなって、そこに滲んでいる強い意志に肌が粟立つ。
「俺はゼノを幸せにする」
それは確かな宣言だった。
「この世界の誰より幸せにしてやる」
少しだけの挑発を滲ませた言葉と眼差し。
挑発なんて滲ませなくても今の俺はエルミックのライバルではないし、仮にそうだったとしてもゼノの眼差しに滲む穏やかさに勝負の結果なんて言わずとも知れている。
ゼノだってエルミックが好きなのだ。既に、エルミックに負けないくらいに。
だって、もしほんの一欠片でも、ゼノの心の中にまだ俺の居場所があったなら、彼は俺からのキスを拒むことはなかった。
結果は明らかだ。
エルミックの恋は実った。
「元片想い相手なんて虫だ、虫けらだ」
「ほんっとうにはっきり言うな、お前」
「それが俺だからな」
「知ってる」
どちらからともなく笑ってしまう。
こうまで言い切ってしまわれたら、もう心配はいらない。エルミックの言う通り、ゼノは世界中の誰よりも幸せになる。
(リドに言ったら対抗しそうだがな)
自然と恋人の位置にリドを思い浮かべるあたり、俺も余裕が出てきたんだと思う。
「じゃあ頼んだぞ」
「あぁ、」
たったこれだけの短い会話。
これだけで充分だった。
エルミックは昔から決して口数が多くなかったが、やる時はやる男だ。
それに、口数が少ないのは普通の友人に対してであって、きっと誰よりも大事な恋人に対しては微笑みながら溺愛するだろう。
そう思えば、足取りは軽かった。
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