20.
ゼノと離れるのは切ない。
だが、俺はリドの元に帰らなければいけないし、ゼノの傍には俺なんかとは比べ物にならないほどぴったりな人がいる。
ゼノを愛してやれて、心を満たしてやれて、共に歩み、共に生きて行ける人が。
炎のように真っ赤な髪を持つあの男の人柄は俺だってよく知っているから安心だし、あいつ以上にぴったりな奴もいないだろう。
だから、
「じゃあな、ゼノ」
俺は去ることにしようか。
お互いに待ってくれている人がいて、帰る場所があって、向かう未来もある。
ほんの少し前までは運命を共にしていた俺とゼノは、互いにとっくに進む道が違っていて、どちらも引くつもりがないのであれば、いっそ清々しく前に進むべきだ。
俺は後悔なんてしていない。嘘なんかじゃない。だって、何もかも未知数な未来に胸がこんなに高なっているんだから。
それはゼノも同じだろう。
ポン、とゼノの肩を叩いた。一秒に満たない短いその一瞬に、思いの全てを込めた。
今まで共に戦ってくれてありがとう。
こんな形で離れて悪かった。
俺の選択を受け入れてくれてありがとう。
俺のことは心配しなくていい。
これからも元気でいろよ。
…エルと、幸せになれ。この先、ずっと。
別れというものは、その先に胸が高鳴るような未来が待っていたとしても、いつも切なくなるもので胸が締め付けられる。
だが、前回と違うのは、
「…また会おう」
ただ短い一言だった。
だが、短くても重みのあるその言葉に、ゼノが驚いた表情になっていく。
前回、サバイバルゲームで別れを告げた時にはなかった言葉。だが、今なら言える。
また会おう、仲間としてまた。
その時には互いの立場を放り出して、あの頃の昔話にでも花を咲かせながら、互いに幸せな話でも語り合おうか。
そんな未来が、きっと来る。きっとだ。
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