15.
「仲間も、夢も、誇りも、信念も、…全て海軍で見付けて、何より大事だった」
ゼノから目を逸らすことはなかった。
「俺も手放したくなくて、苦しんで、何度も何度も…レパードから離れようとした。だが、…できなかったんだ」
キャラメル色の目がさらに潤んでいって、揺れる。俺の手首を握った手から弱々しい震えが伝わってきて切なくなった。
なぁ、ゼノ、どうか分かってくれ。
俺はお前達を簡単に捨てたんじゃない。
お前達は俺の無二の仲間で、お前達と出会えたことに本当に感謝しているんだ。
「俺にとって決して軽いものじゃなかった」
ただ、それでも、
「レパードの方が重かった」
天秤が傾いてしまったんだ。
長く、長く悩んで苦しんだ末に。
恋とは盲目的なもので、病気と言っても過言じゃない。無意識に気になり始めて、気付いた頃には強く惹かれて、離れられなくなって命を燃やすように恋をした。
海軍を軽いとは思わなかった。だが、本能的な恋がそれを上回ってしまった。
それでも、言い切れる。
「海賊だと公言した直後になんだが、…たとえどんな立場だろうと、この先、お前以上の仲間は現れないと思っているんだ…」
たとえ進む道は違っていようとも。
信じるものが変わっていようとも。
命を預けあった親友という位置は、他の誰にも取って変わられることはないだろう。不思議とそれだけは断言できた。
「ゼノ、悪かった」
許してほしい、とは言わない。
ただ知っていてほしいんだ。
「俺に海軍としての誇りはもうない。…だが、海軍であったことはずっと誇りに思う」
その言葉に、耐えていたゼノの涙が、ついにぽたりと俺の頬に落ちた。
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