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6.


いつもなら余裕で追いつけるスピードでもヒールの高い靴を履いていれば追い付けなくて、ドレスが肌蹴ていく。

カツ、カツ、カツ、と猛スピードで走り抜ける足音が二人分高らかに響く。

「ちっ、」

肌蹴たところで人がいないから気にしないが、問題はホールが近付きつつあることで飛び込まれるのは非常に不味い。

太腿にあるナイフに触れる。

万が一のために持ってきたそれを使うのは、まさに今この時なのだろう。

鞘から抜かなくてもあの海軍の後頭部に向かって思いっきり投げ付け、足を止めたところで手刀を落として気絶させる。

傷つけるわけじゃないし、俺達だって上手くことを運べる。それでいいじゃないか。

(…だが、)

軍人に攻撃する。

それはれっきとした国に対する反逆行為で、海軍から離れただけでなく明らかに敵対する立場になるということで。

ナイフを鞘ごと握り締めて、いつでも投げられるのに俺にはそれができなかった。

理由は分からなかった。

海軍を辞職する覚悟はある。俺はもう二度と白を着ない。誇りも信念も軍服と一緒に置き去りにした。海軍なんてものよりリドの方が遥かに大切で、…愛おしい。

分かりきったことじゃないか。

なのに、…なのに、俺はこの肝心な時に目の前の白の軍服に牙を向けなかった。

「チッ!」

鋭く舌打ちしたって意味はない。

だが、いつまでもこうしているわけにもいかなくて、やっと距離の縮まった軍人の腕を思いっきり掴んで後ろに引いた。

突然のことにバランスを崩したそいつは後ろに倒れ込んできて、倒れる時に頭を打たないように注意しながら首にきつい手刀を入れると、そいつは簡単に床に沈み込んだ。

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