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5.


嫌な予感に背中が粟立つ。

思わず逃げ腰になったが、俺はステップを踏むのを忘れなかった。それが失敗だった。

ふわっと上に跳ぶところがあって、本来はそれだけで終わりだが、さっと脇に手を差し入れられたかと思ったら跳んだ力を利用して、リドは俺を持ち上げやがった。

そのまま一周する。青いドレスの裾がふわりと広がって、誰より高い視線となる。

「おま、馬鹿か!」

と小声で叫んだ。

俺達だけが特別な動きをしたものだから、ホール中の視線が集まったのを感じた。

それは先生も例外じゃなくて、しかも、一周回されたから先生と目さえ合った気がする。

僅かに見開いた目。それは大胆な踊り方にか、それとも、俺達の正体を見破ったからか、知る術はなかったんだ。

床に下ろされて顔が熱い。

「おい、今目が合ったぞ!」

「そりゃあ注目するだろうな」

「お前って奴は…!」

たぶん、バレていない。

だってあの先生の性格からして、ダンス中だろうと標的を見付けたなら何かしてくるだろうから。真面目なあの人なら、きっと。

まだ踊ってる。だから大丈夫だ。あれは踊り方に驚いただけ。そう自分に言い聞かせても心臓がバクバクと落ち着かない。

「こっち見てる」

ちら、とリドが隣を見た。

「お前のせいだ。…バレたと思うか?」

「いや、それはねぇな。バレたらなんか仕掛けるだろ。あのティティ先生だぜ?」

「あぁ、俺もそう思った」

どうやら士官学校での学年は違っていても、この先生に対する認識は同じらしい。

目の端で先生がこっちを見ているのを確認して、隠れるようにリドの胸元に飛び込んだ。ちゅ、と口角を啄んでやった。

「お前マジで変わったよな。大胆になった、つーか…、海軍の頃と違うんだが、」

「俺もそう思う。嫌か?」

「全く!むしろ好きだよ。…クックッ、海軍の奴らが見たら驚くんだろうなぁ」

クルリと回されて、やはり胸に飛び込む。

どさくさに紛れて肌けた太股を撫でようと手が動いたから、軽く払い除けた。

「それはダメだ」

「んだよ、ケチくせぇな」

「うるさい。お前こそ約束守れ。踊れば、…何をくれるんだっけ?忘れてないだろうな」

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