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2.

※キーツside

彼がその選択を貫き通すなら、おそらくこの先再び会う日はかなり遠いだろう。

海軍としては思う。惜しい人を失った、と。

だが、一人の後輩としてはこう思うんだ。彼にはもう堅苦しい白は似合わない。もっと自由で広大な海の色がもっと似合う。

幸せになってほしい、と。

だが、それを素直に告げるのは恥ずかしくて悔しくて口になんてできない。

元々手が届く人でもなかったが、軍服を脱いでなお高嶺にいる彼に、そして、これから遠くで自由に生きるだろう彼に、ちょっぴりの意地悪を含ませた最後の軽口を叩いた。

「その証拠にあなたの船には新しい上官が配属されて、通常通りに航海に出ますし?」

「そうだ、それ俺も気になったんだ。大尉らしいが、誰なのか知ってるか?」

「知ってますよ」

と言うと海色の瞳が先を急かす。

そこに心配や懐かしさはあっても未練はなくて、この人はもう本当に引退だ、と心の中で呟いては意地悪く笑った。

「教えてあげません」

「は、はぁ?」

「もう海軍じゃない人に軍の秘密を漏らすほど僕の口は軽くありませんよ」

「…なんだそれ」

ふとその目が拗ねて見せた。

あぁ、一昔前の隙のない完璧な軍人よりも、人間らしく生き生きとよく表情が変わる今の彼の方がよほど素敵で、好感が持てる。

(それでもノエルの方が素敵だけど、)

一度止まった演奏にカーテンの向こう、演奏台に立った新しい奏者を見る。艶やかな銀髪を低い位置で一つに束ね、セロを持って優雅に微笑む人に口元が綻んでしまう。

尊敬している先輩は自ら道を選んだ。…だったら、僕も自分が進みたいを選ぼうか。

クラウド先輩の決意に比べたらまだまだだが、…ノエルに、誰よりも大事な恋人にこれ以上寂しい思いをさせない、二人で寄り添って生きていく温かな道を。

(…ねぇ、ノエル)

年下だって思って僕を舐めてると、痛い目にあわせてやるんだから。

(君を幸せにする覚悟はできてるよ)

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