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2.


事の始まりはこうだ。

聖海祭の後夜祭で楽しんだ後、リドは俺を連れて停泊している船に戻った。

俺は乗組員の雰囲気から海賊だと分かったが、それは経験の浅い軍人なら容易く黙せるほど上手く商船に化けていた。

そこでシルヴィアに会った。

俺の過去からして歓迎はされないだろうなと考えていたのに反して、シルヴィアは涙目で尻尾を振りながら抱きついてきた。

すぐにリドに首根っこを引っ張って、ポイッとゴミのように捨てられたが。

曰く、この半年、リドの機嫌は悪いどころかずっと底辺を這っていたらしい。

救世主だ、と。

この俺が海賊を哀れむくらいにそれはそれは可哀想な、涙でうるうるになった目でこの半年のリドの八つ当たりを教えてくれた。

俺の逃亡に手を貸したことで、こっぴどくお仕置きされたらしい。殴られてはいないが、毎日毎日いじられた、と。

それに罪悪感を感じないわけじゃない。

俺が助けてほしいと言ったんだから。

そして、罪悪感から絆されてしまった俺は、ダイヤを手に入れるまでリドの船で、リドの部屋で過ごす条件を呑んでしまった。

因みに、よくやったシルヴァ、とリドが呟いたことは聞き逃していない。

小さくガッツポーズしたことも。

まぁ、それはいい。別にどこで過ごそうが気にしない。…クウォーツ先輩の宿でもよかったが、俺もリドの傍にいたい。

で、だ。

意味もなくリドがイチャイチャとくっついてきた数日後、ある知らせが舞い込んだ。

ダイヤを盗んだあの貴族、ベルトゥーリ子爵が近々舞踏会を開く。

ダイヤを奪還するにあたって絶好のチャンスだ。堂々と屋敷に入れる上に、招待客も多いから混雑しているだろう。

招待状はリドが偽物を用意したから問題はないし、さらっと盗み返せばいい。

これだけ生きてきて一度も盗みなんてしたことはないが、相手が先に盗んだんだから、と俺も妥協することにした。

だが、一つだけ問題があった。

舞踏会の招待はアベック限定だったのだ。

つまり、男女のペア。

セイレーンに女性の乗組員なんていないし、そもそも盗み目的なら屋敷の警備隊とぶつかる可能性が高いんだから、戦えない女性に任せるのは無理というものだ。

で、リドが言った。

お前が女装しろ、と。

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