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8.


いや、そんなことを考えるのはよそう。

(今くらい考えるのはやめよう)

理性では答えが出なくて、なのに、感情は衝動的なまでにリドと共に生きたいと言う。だが、理性が頷きそうにない。

そのジレンマは解決しそうになくて、とりあえず、今はキスに溺れたかったから目を閉じて自分から舌を絡めた。

そうすると、少し驚いた気配がする。

リドの首に腕を回して、唇をくっつけて舌を絡めていけば、リドは小さく笑ってから激しいキスを優しいものへと変えた。

「ふ、っ…ぅ、リド…、」

今、俺の傍にいるんだよな。

この温度が証拠なんだよな。

口には出さない問いかけだった。だから、答えはなかった。なのに、どこまでも穏やかなキスが全ての答えを物語っていた。

ここにいる、お前の傍にいる、って。

ザラつく舌の表面に背筋を震わせながらリドの唇を啄んで、抱き寄せて距離を縮めれば答えるように腕の力が強くなる。

そして、離した頃にはどちらのものかも分からない唾液が互いの唇を結んでいた。

俺は息も絶え絶えなのに、彼は不敵な表情を保ったまま初めてキスした時と同じ一言を言ってくれやがった。

「下手くそ」

「今それを言うのか、お前」

「だから練習に付き合ってやるよ。この俺が責任持って上達させてやる」

「…都合のいい頭だな」


僅かな時間の甘い甘い恋人ごっこの後、俺はダイヤを手に入れて、海軍を辞職して、リドと別々の道を歩むだろう。

だが、可能性としては知っていた。

そこにもう一つの道が存在することに。

仲間を裏切り、今まで信じてきたものを捨て、リドの船に乗って、これからもずっと恋人として寄り添っていく道が。

(act.7 二度目の夏 終)
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