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青に染まる街


「ほぅ」

「ほぉーぅ、ち、ち、ほれ」

「ほぅ」

「ほうほう、ほぉーぅ」

「ほぅ」

「ほほ、お、食った。マジ可愛い!」

「ほぅ」

「ほーぉ、ほー、ほぅ」

俺は、ちらりと横を見た。

一羽の見慣れない白の梟を腕に乗せたゼノが、にやけながら梟の鳴き真似をしている。しかも、小魚で餌付けしている。

その小魚が入った皿は机の上に置かれ、机の隣には水がたっぷり入った樽が鎮座しており、中で小魚が泳いでいる。

(どれだけ食べるんだ、その梟は)

いや、それよりもどうしてこうなった。

娼館までゼノを探しに行った翌日、つまり昨日だが、ゼノは朝から働いて、俺が言いつけたことを全て終わらせた。

梟を肩に乗せながら。

船の執務室にいた俺に報告を終らせ、そのまま自分の机に座り、いつもより上機嫌で下手な鼻歌を歌い出した。

梟を肩に乗せながら。

そして、暫く歌ったかと思うと唐突に執務室から出ていって、帰ってきた時には水と魚が入った樽と皿を持っていた。

梟を肩に乗せながら。

で、昨日の夕方からずっとこの調子だ。

(こいつ、頭大丈夫か?)

梟は素直に可愛いと思う。

まん丸のクールグレーの目はぱっちりとしていて、つぶらで、クリクリで、魚が与えられる度に嬉しそうに細まる。

だが、ゼノが変態にしか見えない。

「ほほーう、うわ、やべぇ」

「お前の頭がか?」

ついに耐え切れなかった。

昨日からずっと言いたかった。だが、そっとしておきたかったし、実は関わりたくなかったから何も言わずにいた。

(…もう無理だ)

椅子を引き、体ごとゼノの方に振り向く。奴は相変わらず締まりのないあほらしい表情で、餌付けを続けていた。

「どこで拾った?返してこい」

「拾ったんじゃねぇよ。預けられたんだ。返せるわけがねぇ。それに、お前はこいつが可愛いとは思わねぇのかよ?」

「可愛いが。……誰からだ?」

「知り合い」

「…勝手にしろ」

直後、そう言ったことを後悔した。

奴は小魚で梟を遊びだしたのだ。やると見せかけて、梟が嘴(くちばし)を開いた時にさっと後ろに引いたりしている。

(仕事を任せすぎたのだろうか)

その疲れで頭がおかしくなったのか。

俺が梟から小魚を奪う少尉を眺めていると、ついに怒ったらしい梟が奴を突っつく。怯んだ隙に、見事に小魚を獲得していた。

「そうだ!」

バン、とゼノが机を叩く。

俺はビクッと肩を跳ねさせた。

梟もパタパタと羽を動かした。
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