テキスト | ナノ

私はピッコロさんが大好きです!その悪そうな目付きも、ピンクと緑の筋肉質な腕も、頭にちょこんって生えた触角も、全部ぜーんぶ大好きです!!

今日も私は悟飯お兄ちゃんに黙って、ピッコロさんが住んでる天界へ遊びに来た。お兄ちゃんは私が舞空術を使えるの知らないから特に気付いてないと思う。(ポポに教えてもらったの!)(ポポ、悟飯に殺される。)(大丈夫大丈夫〜!)(ピッコロに守ってもらう。)まあ知られたら怒られるんだろうけどね、一人で危ないじゃないかって。でも別に構わなかった。だって大好きなあの人に会えるんだから!嬉しさを堪えきれず鼻唄を歌っていると、神殿の端に愛しい姿を見つけた。

「ピッコロさーんっ!!」
「……またお前か、ナマエ。」
「あのねピッコロさん。私とね、お付き合いしてほしいの!」
「断る。」
「なんで!?」
「だから何度も言っているだろう。ナメック星人は人間のように男女に分かれていない。だから恋愛というやつはまったく分からんのだ。」
「えー、だってピッコロさんは男ですよ。」
「なぜそう言い切れる?」
「誰よりもかっこいいからです!!」

思った通りにそう言ったら、ピッコロさんは豆鉄砲を食らったみたいな顔をしてびっくりしていた。あはは、面白い顔!なんて口が裂けても言えないから心の奥底に留めておく。もう一度ピッコロさんを見たら、なんだか難しい顔をしながら頬を赤くしていた。あ、ピッコロさんの顔が赤い。初めて見たその表情に、今度は私が驚かされた。

「お前は恥ずかしげもなく、よくもまぁそんなことを……」
「は、恥ずかしいですよ。」
「?」
「ただ…好きな人には素直な気持ちを言った方がいいかなって思って……」

誰にでも言っているわけじゃないんです。ピッコロさんだから素直にかっこいいって言うんです。だって嘘ついて、自分の気持ちに蓋をしたまま後悔なんてしたくないもの。ピッコロさんがナメック星人で、恋がなんだか分からないのは知ってます。でも、でも、ただ知っておいてほしいんです。私があなたを好きだということを。そしていつしか私という人間が居なくなって、やっとあなたが恋を知ったとき、私がピッコロさんに対してどう思ってたか。この胸がどれほどピッコロさんに締め付けられてたか知ってほしい。それで、ピッコロさんが本当に愛した人を大切にしてほしい。だから…だから…!

「もうわかった。」
「っ、え……」

耳元で鳴った低い声に、ふと我に返る。気がついたら、私はピッコロさんの腕の中にいた。どうやら心の中で喋ってたつもりが、口から出ちゃってたみたい。ぎゅううっと彼の胸元にしがみついて、まるですがっているような体勢になっている。なんだか恥ずかしくなった私は「すみません!」とピッコロさんから離れようとした。けれど、ピッコロさんは私の身体を腕で固定したまま動こうとしてくれない。ピッコロさん、力抜いてくれないと離れられません。

「……が…、」
「へ?」
「れ、恋愛というものはよく分からんが…貴様が居なくなる前に、理解してやる。」
「…っ」
「だから、ナマエ。」
「……!」
「ずっと傍にいろ。」

まっすぐな視線と言葉が、なにより嬉しかった。ピッコロさんは本気で言ってくれてる。傍にいろって。恋愛を理解するって。私はもう涙だかなんだか分からないものでピッコロさんの服を濡らした。泣くな!と少し大きめの声で怒られたけど、ごめんなさい、泣き止まないです。おでこをこつんと彼の左胸に当てたら、鼓動がとっても速かった。あ、今の私とおんなじだ。