テキスト | ナノ


「おはよう。」
「……」
「おはようってば。」
「……」
「さっさと起きないと殺しちゃうぞ。」
「おはようございます。」

朝から目に悪い(というか心臓にも悪い)ものがわたしの上に覆い被さるような姿勢で片腕をベッドの端につき、ご機嫌な表情を浮かべながらわたしを見下ろして挨拶をしてきた。ほんの少し薄目を開けたら、毒物…じゃなくて団長の肩越しに見えた時計はまだ午前四時を指している。ああ、まだ寝られるじゃん。そう思って一方的な挨拶を無視していたら、声色を変えず爽やかな顔で殺人予告をしてくる始末。仕方がないから眠い目を擦り起き上がろうとすれば、あと数センチの距離に団長の顔が広がって「ひぎゃああ!!」と大声を上げてしまった。

「早朝から元気だね。ご苦労さま。」

目と鼻の先で相変わらずの笑顔を作ったまま視線を一瞬合わせるとまるでわたしを小馬鹿にしたように笑い声と皮肉を含んだ言葉を投げつけてくる。くしくし目尻を指で擦ったらちょっとだけ眠気が弾けた。足元に視線を向ければ、つい今まで黙っていた人物が目に映る。

「ってかなんで阿伏兎さんまで居るんすか」
「ケッ、どっかのバカ団長のせいで俺も睡眠時間が一時間だよ。テメエも道連れだナマエ。」
「ふざけんな。」
「ハハハ、人聞きが悪いな阿伏兎。俺はどっかのアホ提督に食事を誘われたから君を呼んだまでだヨ。」
「このスットコドッコイ。なんでお前さんが呼ばれた食事会にわざわざ俺たち部下が安眠を妨げられなきゃいけねえんだ。」
「阿伏兎さんに賛成。」
「いいからとりあえずついてきなヨ。」
「わー労働基準法の違反をとりあえずで片付けたよこの人。」
「ここ地球じゃないからそういうの無いよ、ナマエ。」
「ストライキ起こしていいっすか阿伏兎さん。」
「もう諦めろナマエ、団長に何言ってもお前さんの言葉は右から左へ受け流されてんだ。」

結局団長に、アホ…じゃなくて阿呆提督が待つ食堂まで阿伏兎さんと二人、連行されたのでした。マジでこの人の部下を辞めたいと思いました。でも辞めさせてくれない神威団長と上層部のひとが大嫌いです。食事会の後団長と共に、第七師団を消そうと動いた春雨とのゴタゴタに巻き込まれてしまい、本当に幸せな人生を送る為にやっぱり団長の部下を辞めさせて欲しいと思いました。ああそうだ、OLにでもなろうかな、なんて考えたりもした時もあったけれど、なんだかんだ言って神威さんの下で働くことが一番楽しいと感じたりもしてます。