6 母体は何処のどいつだ
 

快晴の青空に太陽の光が照り付ける。蝉の音が耳の奥で響いた。

道路に飛び出して直ぐ様反転、足を止めた。それを見たうさぎもゆっくりと速度を落とし5メートル程距離をあけて立ち止まる。うさぎの瞳は据わっていた。深く濁り以前のような輝きはもうそこにはなかった。

「なんだってんだよ、物騒なモン振り回しやがって」

「だってこうでもしなきゃ、相手してくれないじゃん人間」

そう言って口の端を吊り上げて、手元で鉈をクルリと回して玩ぶ。

「つーかオレうさぎだけどさあ、元はうさぎじゃねーんだよねー。なんかさあ、不公平じゃね?」

目を見開いて、瞬間的に隣の神様へ視線を向ける。そんな話は聞いてない。神様はこちらへ顔を向けず、眉を潜めて目の前のうさぎを見ていた。

「なるほど、神の種か」

神の種。別名、神の子供。神体の一部から生み出された神の手を受け継ぐ新たな神。

「母体は何処のどいつだ、ったく面倒なのを引き当てやがって」

「俺のせいかよ……!?」

だが確かに選んだのは俺だった。直接見たわけではない。曖昧なイメージの中から直感的に選択した。それは温かく優しいイメージ。

「似た者同士ってか。ハハッ良いよなあ、お前らは愉しそうで」

うさぎは血の気の失せた顔色で俯きがちに此方を睨み、すっと全身が脱力したように不気味に佇んでいた。




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