5 ひとをばけものみたいにいってさ
 

神様はそっと俺の首筋に触れた。自分の脈動を感じて息を飲む。何をしてるのか困惑していると突然、突き刺すような痛みに襲われる。この感覚はたぶん、爪を立てられた。それは徐々に深みを増していき、俺は当然の如く痛みに顔を歪ませる。

「異種のDNAが紛れ込んでるな。それも稀少な純血縁者の血だ」

その時、ガラスの割れる音がした。見ると窓ガラスが割れており、そこから覗き込むようにうさぎが俺の方を見ていた。

右耳が欠けていて、手には鉈が握られている。中へ入ろうと窓を跨ぐとどす黒い色をした内臓がケツの穴から飛び出していた。ずるずると柔らかそうな腸を床に引きずって歩み寄ってくる。薄ら笑みを浮かべて不気味にゆっくりと下唇を舐めた。
俺は食べられるのだと直感する。うさぎが使ったのはおそらくテレポート。それはつまり───神格化。

墜ちた神は少なくない。そういう奴はヒトを食べ、その時に微力の神の手が紛れ込み体を犯す。偽神の出来上がりだ。

「なるほど、さてはあいつに何かされたな」

「昨日何か変な液体入れられたんだよってかどうすんだ、この状況」

「逃げよう」

「神様の癖に逃げのかよっ」

「私は長寿の神だぞ、暴力など意に反する行為だ」

そんなことを言ってる神様の手を取って即座に部屋を飛び出す。視界の隅で先程いた場所に鉈が突き刺さっているのが見えた。うさぎもすぐに後を追い掛けてくる。

「酷いなあ、ヒトを化け物みたいに言ってさあ」

うさぎだけあって足は速くあっという間に距離を縮められてしまう。廊下の横の階段を飛び降りて玄関を抜ける。息が上がってきた。



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