15 かとうせいぶつについばまれてしねばよかったのに
 

「っとお」

両足で着地してみせると、不敵な顔をして俺を見る。大丈夫。痛みは薄れて来たので、余裕でガンは飛ばせる。

「あの手の神サマを手懐けておいて正解だったね?暴力反対側だよ、あんなの俺が怪我するだけじゃん」

「今、殺せばいいんじゃないか?」

黒い男は薄笑いをやめてこちらを見る。

「だから、アイツが来た時点で俺の負けは決まったんだよ。理不尽だね全く」

そういうと静かに頭上を見上げる。そこには男とは異質の、もっと残酷で狂気じみた笑みを浮かべるうさぎの姿があった。

「あっれー?続けないの?その人に触れた瞬間その体を肉塊と血溜まりに変えて下等生物に啄ばまれて死ねば良かったのにー」

男は俺を見るとこなく背を向けて、現れた時と同じように、瞬く間に姿を消した。名を明かさず、正体を隠したまま、嵐のように去っていった。

うさぎが軽やかにこちらへ降りて、俺の横に立つ。差し出された手のひらをゆっくりと掴んで起き上がり、うさぎが丁寧に俺の体を調べ始める。

とりあえず、収獲は無きにしも非ずってところ。

「皇帝は、まあ俺のことだろうな、前もなんか言われてたし、いやあれは御子息だったか。うさぎが神だってのも知ってたな。それから、赤い夜か」

「……皇帝?まあ、神堕ちしてるオレを神様なんて呼ぶやつはそうそういないわな」

俺はズボンのポケットから手帳を取り出す。忘れないように。失わないように。書き記す。全てを。

「いよいよ、平凡な日常なんて言ってられなくなっちまったわけだ」

この世界の疑問に意識を向けよう。俺だけが傍観者じゃいられない。
まずは、さっきの男の身元解明をして、知ってることを吐いて貰うのが早いだろう。あの様子だとうさぎがいれば俺を殺そうとしないだろうし、何かと使い勝手が良さそうだ。

その時、ズボンのポケットから音が鳴った。着信だ。軋む体を傾けてポケットから携帯を取り出し、相手を確認する。そこには長寿の神と写しだされていた。

「なに」

「あー雷鳴のクソババア知らねえー?端末も置きっぱ出し連絡とれねーんだわー。よく君んところ出入りしてるみたいだから、何か知らねえかなーって思って聞きたいんだけど」

聞き覚えのある騒がしい声がした。



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