12 俺は今、間違った順路を進もうとしている
 

うさぎは得意げに指を立て言った。そしてフフンと鼻を鳴らす。

「さて、オレの計画を教えてあげよう」

そのむかつく顔面を見て、俺は思わず拳を固めて右ストレートを繰り出す。うさぎは奇声と謎の液体を飛散させて後ろへ倒れた。「なにやってるんだ、お前ら」と横で見ていた長寿の神が呆れた声を出す。

むかついた。よくわからないけど、俺は今、激しくむかついていた。拳は固めたまま動かなかった。

「はっきり言うけど俺は怒ってる。もうやだ。本当にもう無理。マジで連れて帰ってお願いだから本当はやく」

「えぇ……昨日の今日でそれを言うのかよ……いやオレだって色々考えてるんだぞ……てかぶっちゃけ只者じゃないと思うんだよオレは……そこをちゃんと踏まえてさあ……てか痛ぇよクソ野郎ぉ…」

うさぎはぷるぷると震えながら芋虫のように丸くなって言った。俺は肩をすくめて小さくはあ、と息を吐いた。少し、落ち着こう。

整理すると恐らくこいつは俺に自分の血液を混入させた。もとより神であるやつの血液中にはただの人を神格化する力が含まれているはずだ。なんの目的があってそんな狂行に走ったかは知らないが、結論的にやつは俺を神にさせようとして、そして今、まんまと俺は神にさせられてしまったということ。当時のうさぎは堕落神に喰われる前の出来事であるから、紛れもなく純血縁者の血が俺の中にあるわけだ。堕落神による神格化が負だとすれば、これは正の神格化。だからって、それで本当の神になれるなんて都合の良い事があるわけないけれど。

「なんでこう、勝手な事をしてくれるかなあ…」

頭を抱えた。理解の出来ない不安感に襲われていた。得体のしれない恐怖が近くにある気がした。たぶんきっと俺は今、間違った順路を進もうとしている。

「でもさ、そろそろ真実を解き明かして行くのもいいんじゃねーの?」

そこにあったのは、何処までも胸を突き刺す哀れみの表情だった。俺はそれを、過去に目にしたことがあるような気がした。



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