11 ふびんなおれをなぐさめてやりたい
 

いつの間にか抱いた疑問は、自然消滅する。不思議なことに俺達の思考は強制的に停止する。ただ、その違和感に気付いたのはもっと後のことだ。そのときは微塵も疑いようもなく、全てを受け入れていた。


気付くと、外で小鳥の囀りが聞こえた。

「例のDNAの件だが……おい聞いているのか」

布団越しでは太陽光の猛攻を感じる。何故か聞き馴染みのある声が近くでした気がするのは聞き間違いだろうか。俺は気が乗らずに動かずにいたところ、どすりと重い足蹴りが脇腹を捉えて、かなり痛い。という事で、仕方なく俺は寝ぼけ眼を押さえながらベッドから体を起こした。
目を開いて見る。うっすらと見えた。だが、うっすらとしか見えない。そして俺は目の前で温もりを感じることに気付く。眉間に皺を寄せて凝視して見るが、わからない。手で触れて見る。何やら、柔らかい。

「朝から元気なモノだな」

近くでやや深みのある声がした。深みと言うか、言い換えるとすればそれは、確実にドス声だろう。微笑んだ目元には不気味に影が掛かっているようだ。

当然のように顔面に拳を喰らい数メートル後ろへ吹き飛ばされる。俺は壁際の本棚に強烈な衝撃と共に体を受け止められ、棚の中の本はボロボロとなだれ落ちる。

なんて凶暴なのだ。平和主義が聞いて呆れる。はあ、と息を吐いた。不憫な自分を慰めてやりたいと思わずにはいられない。

「で、何なんだよ。てか勝手に入って来んなよ」

「ああ、そうだ。血液操作により神格化おめでとう」

「は……え?」

俺の声と同時に、奥の部屋で物音が聞こえた。うさぎに貸している部屋だ。ドタドタと足音がして、ドアが開いた。
それは言うまでもなく、期待と好奇に満ちた表情。その意味はなんて、考える必要ないはずだ。頭の血管が拡張した。

「成功し」

「死ねクソッ!」

「ングブッ」



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