僕らは決して幸せではなかったけど、これで良いのだと思えた。苦しくても父様が愛してくれれば我慢出来た。この血生臭い場所で父様だけが僕らに優しくしてくれたから。皆、酔ったように父様にすがった。父様を心から愛していた。

僕らはそういう風に躾られた子供なのだ。

けれど自覚しても何も変わりはしない。ただの良く躾られた子供でしかなかった。頭で理解していても心と体は別の生き物見たいにまるで協調性がないのだ。

「父様だって施設員に変わりはないのに何故好きだと思えるの」

「優しくしてくれるからだよ」

「偽りかもしれない」

「そんなのどうだっていいのさ。僕らは父様がいるから生きていられるんだ」

そうだねと目を伏せた。

「確かに父様がいなければ、僕らは全員舌を噛んで死んだも同然だ」


こんなにも無情で残酷な世界を早く壊してくれと願う。
そうしたら私は抜け出せるかもしれない。この見えない鎖でがんじがらめにされた体を、この父様を欲する体を。
解き放たれる時は来るのだろうか。
そんな渇望をして、また今日も手を伸ばす。

「父様……どうか、優しく……」

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