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下崖さんの戦略的な
2011/08/28

今朝、希望が暴れた。
異様な奇声に目を覚まして、声のする方に進めば辺りは悲惨な現状だ。荒らされた家具たちは無惨に横転しもしくは粉々に散らばり、その隅で踞って啜り泣く希望をあやしにかかれば何処かで手のひらを切ってしまっていたらしく自分の血液がぽたぽたと流れ落ちた。そうしたらそれを見た希望が更に喚き出すから一体どうしたものか、と悩み狂って単純に止血した。多少落ち着きを取り戻してきた希望の口を無理矢理抉じ開け指を捩じ込み開口させ玉状の薬を放り込む。自らの口内に冷たい真水を溜め、そして奴の口内にそれを流し込み薬と共に嚥下させた。これで大丈夫だろうと安堵も束の間、再び辺りを見渡して見れば変わらずの悲惨過ぎて目が回りそうだ。

「…あれえ、なーにしてんのお」

希望特有の間延びした声はゆったりと鼓膜を振るせた。何って、何でしょうね、たぶん掃除かな。寝ぼけた希望におはよう、と声を掛ければ「おはよお」と欠伸をしながら答えてくれた。そしてこちらに近付いて来たと思ったら手を掴まれる。

「怪我してるよー?」

傷口を確認すると、そこに抉るように指を突っ込まれた。痛さに悶える。

「気を付けてねえ、かがいちゃん」

顔面を弛緩させて俺に手を振る。困った奴だ、全く。復活した希望を追いやって、再び流動しだした血液は気にも止めずに希望が暴れ呆けたこの場の始末する。仕方ないだろ、そうゆう奴なのだから。


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