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愛玩食物とフォーク
2011/08/28

尖ったその先を自分の首もとに向けて、ゆっくりと少しずつ力を込める。皮膚が裂けゆくのを感じる。早く串刺しにしなければならないというのに、なんて僕は鈍間なのだろう。彼女に最高のディナーを食べさせてあげたいのだ。だから僕は思い切って力を命一杯加えたのだが、なんということだろう。コップに注がなくてはならないことをすっかり忘れていたのだ。滴り落ちる僕はとても悲しい気持ちになってしまった。
「あら素敵な首飾りね」

彼女は微笑みながら僕の頭を撫でた。だけど未完成な僕は慌てて弁解をする。彼女はそれでも笑っていた。僕のフォークは僕の骨となり彼女にしゃぶりつくされた。


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