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人生ゲーム
2011/07/27

我先にと焦燥に駆られた子供達が、人を蹴倒し踏み付け罵声を上げて出口を探している。それに乗り遅れた子供達は偽善臭い気持ち悪い笑顔を貼り付けた大人達に連れられ泣き叫けぶ。タイムリミットは残り1分。だけどその前に鍵がないところを考えて結局1分どころではない。
皮肉にも高級ホテルの様な雰囲気を漂わせたこの場所には沢山の扉があり、特に変わった所のない木製の扉と金属製の扉の二種類が疎らに設置されている。何故か天井はコンクリートが剥き出しであるのは心理的な嫌がらせだろうか。と首を傾げたかったのも山々、そんな暇など在るはずもない。
大人に足を掴まれ引きずられていく子供と目があった。潤んだ瞳は仔犬のようだった。その子供は何も出来ずに分厚い扉の向こうに消えてしまった。それが命に関わる事だというくらい容易に想像が出来る。捕まったら終わりだ。
目の前を走る子供の襟首を掴み引き寄せ、いかにも鍵を持ってますと主張した左手からそれ奪い盗る。追い掛けてくる子供の髪を掴んで殴って動けなくするとその数字を確認する。鍵や扉には四桁の数字がふられてあり鍵と同一の扉から脱出出来るという仕組みになっている。それには"4187"と小さく彫られていた。高級臭い茶色のカーペットには無数の染みや傷が目立って所々に転がった子供も少なくはない。振り向くと此方を見つめる少女がいた。先程鍵を頂戴した子供である。彼は目を背ける。罪悪感よりもむしろ勝利という達成感から緊張が解けてゆくのを感じた。見つけた同じ数字の扉に手をかけ勢いよく飛び出した。

急いで足を止める。どうゆうことだろう。戸惑う彼に何処からか流れてきたアナウンスが聞こえた。

『第二のゲームを開始いたします』


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