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宝探し
2011/07/29

僕は世界を敵にまわして生き残る。ルールは簡単だ。宝を多く集めたほうが勝ち。ようは宝探し。実に原始的なゲームだ。
だけどなんの嫌がらせか知らないが僕の敵は世界になった。僕ひとり対世界なんてどうかしている。世界は僕を蹴り倒しに掛かる。
ルールは簡単だ。勝ったものだけが生き残りほかは死ぬ。皆は僕に勝ってもらっては困るのだろう。稀に僕を殺そうと襲い掛かる人もいるのだけどまあつまり簡単な話僕を殺せば勝負無しに終われるからだ。誰が考えたのだろうか実に効率的である。だが誰も僕にはついてはこれない。自分でも驚きである。潜在的超運動能力を持ち合わせていたらしい。
階段の手摺を飛び越え下の階へ降下する。追いかけてきていた人間を踏み倒し着地すると素早く人混みを潜り抜ける。

フィールドは学校の校舎のようで人間がごった返している。ここには計五ヵ所の集計所兼ボス戦が設けられておりそこで見つけた宝を数値に変換することが出来る。またボス戦に勝利すると宝を与えられる仕組みになっている。単体の僕はこのボス戦に全て勝たなくては勝機は見えない。目指すは集計所である。

校舎裏には森林が広がっていてその周辺に嘔吐物を思わせる異様な湿地が出来上がっていた。皆は裸足で何かを必死に探しているようだった。宝でもあるのだろう、僕もその中に紛れ込む。ぬちゃぬちゃとした感触に鳥肌が立った。「不運にも命を失ったやつの死体があそこにある」誰かがそんなことを言う。ざわめきが起こり作業が停止する。僕は見渡して見たが見付けられなかった。どうしてそんなものがあるのだろう。暫くして興味の失せた僕は校舎裏から校内に戻る。そこで足の裏に何か奇妙な感覚を覚えた。ぷちぷちと水脹れのようなものが出来ていて皮膚を引き裂いてみると小さなミミズの様な生物がうようよと零れ落ちてきたのであった。罠か、と僕は後悔する。げすな手を使うものだ。全ての処理を終えると集計所に向かった。

『また相手の奴等にボス戦落とされたらしいよ』『相手ってひとりだろ?そんないくつも落とせるもんかよ』『それが手ぇ貸してる奴がいるっぽいんだよ』『ばかじゃん自殺行為だろそれ』

辿り着いて僕は足を止める。ボス攻略の文字が視界に入った。もちろん僕は何もしてはいない。だけど僕は単体である。つまり仲間などいないのだ。というのにこれは一体どういう事なのだろうか。僕は懸念気味になる。だけど呑気に考えてる余裕などない。後ろの方で騒がしい音がする。僕は走り出した。


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