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第三プレイ
2012/08/27

目を開けると真っ白い部屋にいた。薄暗く埃の匂いが鼻についたが壁が白いからだろうか廃れた様子は感じられない。またここかと溜め息が出た。
慣れた手付きで部屋から出て病院のような廊下に出る。だけど何処も薄暗くて気味が悪い。拙い記憶を辿りに進めば過去の惨劇が蘇り、確かこの場所は一面返り血と肉片でいっぱいだったなと思い出す。だけどもうその面影すらない。あちらこちらに目につく金属で出来た異様な扉は相変わらず頑丈なようだ。開くか試してみたがびくともしなかった。
この廊下の奥に食堂がある。唯一電気が点く場所で、ここで一番大きな場所だ。だが食堂といっても食べ物があるわけではなくテーブルがいくつかあるだけだ。水道やトイレが近くにあるので前は皆でそこに集まっていたものだった。
食堂にいってみた。他とは違いここだけ電気が明るいものの、前回とは一転して閑散として誰もいない。中に入って左の壁際のイスを引くとギギイと床が鳴り部屋に響き渡る。テーブルの下を見て何もないことを確認して腰を下ろした。気付くと鳥肌が立っていた。三度目と言うこともあってか恐怖は感じてはいなかったもののこれは予想外だった。ここに来れば誰かしらいるものだと思っていたから期待していた分、ショックが大きい。
いままではこんなことは無かったのにと思い返せばそこには誰かしら人がいた。
今回のはいままではとは違うのかもしれない。一人でやれと言うのかと疑いながらも心の中では既に確信していた。
一度目のイベントは敵から逃げるだけだった。二度目は皆で殺し合った。ここから動けそうになかった。それほどまでに心が折れていた。
だけどそんなことも言ってたらすぐに死ぬだろう。まだイベントが始まってないからといって安心してられる訳でもない。ここには“アイツ”がいるのだ。
捕まらない為にも早くイベントを始めるのが最善策だと思ってきたけど果たしてあそこまで辿り着けるかどうか分からない。どうして私はあんなところまで行くことが出来たのか不思議でならなかった。これほどまでに一人という事実は重くのし掛かる。いっそ自害してしまおうかと考える。考え出したらそれしか考えられなくなった。怖い。怖くて堪らない。視界に黒い影が映った。

即座に音を立てずイスから下り、身を屈めて少しずつ距離をとる。黒い影を放つ“アイツ”は入口で立ち止まり中を窺っている。影の中には白い肌の女の形をした“アイツ”がいる。こちらに来ないところからみて、どうやら気付かれてはいない様だ。そうやって音をさせず突然現れるから油断の隙もない。常に神経を張っていなければならない、ここはそういう場所だ。意識を集中させ息を潜めながらいなくなるのを待つ。
だけど“アイツ”は中へ入ってきた。心臓がより一層激しく脈打つ。ゆっくりと拙い足取りで近付いて来て、その奥には形ばかりの調理台があるだけだというのにどういうつもりなのか。ペタペタと粘ついた足音が響いた。



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