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狭心アルキメデス
2011/07/29

痛いの ああ痛いよ。詰まらない性情に陰鬱吹かして唇を咬み千切ってやろう。長閑な風貌を逆手に取れば何時だって俺は一人だ。
( 寂しいよ )
だけどどうせ大した支障には成り得ない。人間寂しくたって生きて行けるから。

噛まれた口許を擦り上げて張り裂ける憤りをスプーンで掬って嚥下したんだって。誰かが言っていたよ。どうやら一人では無かったらしい。肉欲塗れた女に昔、俺は抱き締められたのだ。

俺は泣いたよ。だけど淫らな女は毎晩喘ぎ散らして堪らずその口許を奪い取って吐き捨てたって教えたよね。嫉妬をしたんだ。彼女に必要なのは俺じゃないから。

頭の悪い女の脳内は悪魔が喰い犯していた。それを知っておいて尚俺は彼女に矛先を向けたのだ。思わず苛立ちさえ覚えたけれど、

悪魔の呪いは飽きたらず浮遊して忘れられる事実を真正面から受けて立つ自信なんてこれっぽっちも無かった。虚空に放り出された俺はひたすら逃げることしか出来なかったのだ。

( 思い出して貰えたかもしれない )
( 思い出して貰えないかもしれない )

喰らえば喰らう程その身はより薄く軽くと何かの宣伝だろうかなんて彼奴の脳内は黒ずみ汚濁するばかりだろうと流暢に吐き出す無差別兵器は微かな衝撃をぶちかました。
誰、と彼女は言った。

恐怖に平伏した貧弱な精神は粉々に砕けて割れた。力になれなかった無能な俺をどうか許さないで。


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