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溺愛ボンテージ
2011/08/28

水槽に真っ赤な金魚が飼われている。飼い主は知らない。金魚の餌と記載された袋が置いてあったので袋ごと投げ入れる。ぽちゃんと音を立てて水が跳ね返た。
「何をしているの」
床に撒かれた水槽の水は思いの外大きな水溜まりを作った。僕は素知らぬ振りして通り去った。

真っ赤な魚が飼われている。小さな水槽だ。僕は少しずつその水を解放する。もう少しだよ、と声をかければ“有り難う”と声がする。
「何をしているの」
「救済だよ」
飼い主は悲しそうに僕を見ていた。

僕は水槽を貴方に投げ飛ばす。水は宙を舞って世界を潤すんだ。水槽の水を含んだ貴方はより一層悲しそうに僕を見ていた。

君を縛り付けていた鎖はもう無くなった。水のない世界はどうだい。
「有り難う」
「どういたしまして」

腐った赤い金魚は床に落ちた。


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