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「じゃーん!今日は指を切っちゃいました!」
なんて呑気に言いながら両手を見せてきた彼女の指には、たくさんの絆創膏が貼りついていた。微かに血が滲んでいるのが分かるそれを見ながら、俺はぐっと眉間に皺を寄せた。

最近の彼女はいつもこんな調子である。
自傷癖があるのかは知らないが、指であったり手首に近いところであったり、とにかく細かい傷が多いのだ。気にしないでおけばいいのだろうが、如何せん彼女が自慢気に見せてくるからたちが悪い。
「…分かったから、その手はもうしまえ。」
「何で?これは私が頑張ったっていう勲章なのに。」
「傷口を見せられていい気はしない。」
「…つれないなぁ。」
溜息をつきながらも、自分の言う通りに手をポケットに仕舞った彼女は、まだ納得いかないといった表情で俺の顔を覗きこんでいる。
一体どうしてその傷を誇ることができるというのだろうか。
まちがいなく、傷など無い方が誇れるというのに。

「いつも思うんだが。」
「なんでしょうか。くだらない事なら聞かないよ?」


(どうしていつまで経っても上達しない料理を繰り返して傷ばかり増やすのだろう、って。)
(い、言ったなこの大馬鹿サイボーグ!)








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