貴方の幸せ | ナノ


小1時間ほど店を見て回った結果、めぐみちゃんへのプレゼントは無事購入できた。蘭丸の目に留まったそのマグカップは、赤地に白で雪の結晶が描かれたシンプルで可愛らしいものだった。センスあるね、蘭丸。
包装されたプレゼントを受け取った蘭丸はとても幸せそうで、めぐみちゃんのこと考えてるんだなーってすぐ分かる。


「思ってたよりすぐ買えたね。どうする?どこか行きたいとこある?それとも帰る?」
「そうだな、桜はどこか行きたいとこあるのか?」
「うーん、用事は無いけど」
「じゃあ、ぶらぶらしよう」
「ぶらぶらって…」
「2人で出かけるなんて久しぶりだろ?せっかくだしな。嫌か?」
「ううん、そうしよう」


昼ご飯を食べて、本屋に行って、スポーツショップに行って…私達はファッションゾーンへとやってきた。


「蘭丸こういうとこ嫌じゃない?」
「いや、全然。ま、レディースばっかってわけでもないしな」
「そうなんだー。あ、あれ可愛い」


私が惹き寄せられたのは、ちょうどタイムセールを開始したらしく一際賑わっているお店にディスプレイしてあるマフラーだった。


「どれどれ…なんだ、桜マフラー持ってないのか?」


少し遅れて蘭丸が私の横に並ぶ。うわあ女性服オンリーの可愛い系のお店なのに違和感迷子だ。


「今何か変なこと考えなかったか」
「な、何故それを…!」
「桜…」
「マフラーねー持ってはいるけどもうくたびれちゃってて。小1の頃から愛用してるやつだから」
「スルーかおい」


ちらっと値札を確認……うん、許容範囲内。買おうかなあ…。
とりあえず頭の中でキープしておいて、他も見て回ってみる。


「しかし、女ってのは皆服装に気合入ってんなー」
「本当、あの娘とか、顔も可愛いしセンスもあっていいなぁ」
「そうか?桜の方が可愛いだろ」
「へ?」
「今日の服もサンタさんみたいで可愛い」
「え?ばっ、らん、ま…!」
「おいおい、俺は水被っても女にはならないぞ」
「ご、ごめんちょっとトイレ行ってくる!」


堪らずにその場から逃げ出してとりあえず宣言どおりトイレに行き、鏡を見ると、そこには真っ赤な顔した自分がいた。


「何よあれ…ばか蘭丸…」


恋人同士みたいじゃない。

完璧な不意打ちだった。きっと本人は何も考えてなかったんだろうけど、威力は絶大だ。
可愛い、なんて…私に言うことじゃないでしょ、蘭丸。
あの瞬間、私は不覚にも心から嬉しく思ってしまった。頑張って考えたコーディネートを見ててくれた。可愛いって言ってくれた。とっても嬉しかった。


「まあ、蘭丸はめぐみちゃんのだし」


何かを諦めるように呟いた言葉と一緒に涙が頬を伝った。
何で泣いてるの、私。


嬉しいな、嬉しいよ蘭丸。でも、辛いよ……!





140815

久々に。どう収集つけるんだこれ。






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