鈴蘭の君 | ナノ


「桜ー!!おはよう!!ねえ桜ってばー!!」


…来た。
背後から猛スピードで近づいてくるとある人物の声に思わず顔が強張る。今までの経験からして、接触まで残り5秒といったところか。
4―3―2―1――。


「桜、おはよう!」


後ろからのしかかってきた重みに若干バランスを崩しながら、私は仕方なく朝の平穏に別れを告げ、振り返った。


「おはようリュウジ」
「おはよ、桜」
「あれ、俺スルー?」


そこには、いつも通り友人の緑川リュウジと知り合いの基山ヒロトがいた。


「水臭いなー桜は。俺と桜の仲じゃん、“知り合い”はないでしょ」
「心を読むなそして誤解を招くようなことを言うな!」
「今日も元気だねえ2人共」


1人のんきなリュウジをよそに、ヒロトは再び抱きしめてきた。


「歩けないからどいてよ」
「んー?充電中ー」
「そういうことは彼女とやんなさい」
「え?俺たち付き合ってるじゃん」
「んな訳ないでしょ、バカ」
「ほらほら、遅刻するよ?ヒロトもはやく離れる」


リュウジにヒロトを引っぺがしてもらい、ほっと一息つく。この変態めが。朝からかなり疲れた気もするが、これが今の私の日常。良き友人とド変態と共に過ごす高校1年生の5月だった。




130806

連載開始ー






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