短編 | ナノ


※天葵注意


「神童、お疲れ様」
「ああ、ありがとう」


部活終了の合図でぞろぞろとベンチへ戻ってくる部員に手分けしてタオルとドリンクを渡す。ちなみに、ドリンクはそれぞれの好みに合わせて毎日全員分私が作っている。


「はい、蘭丸。お疲れ」
「サンキュ、桜」


そして無人となったグラウンドで練習に使ったボールやコーンを回収すれば本日のマネージャーの仕事は終わりだ。


「洗濯は明日でもよさそうですね」
「うん。あ、あんなとこにも…」


後輩マネジの葵とボールを集めていると、1つだけ隅の方に転がっているボールを見つけた。


「あ、本当だ。私、取ってきます!」
「いや、私が行くからいいよ、葵」
「でも…」
「いいって。葵今日天馬の家行くんでしょ?」
「な、なんで知ってるんですか…」
「2人が話してるのが聞こえた」
「本当、先輩には敵わないです…」


照れてる葵可愛い。ああ、青春だねえ…。
ふとグラウンドの入口に目をやるといちはやく着替え終えた天馬が出てくるのが見えた。


「ほら、天馬が来た。後は任せて、もう帰っていいよ」
「はい…ありがとうございます!」


走っていく葵を見送ってから私はボールを拾うためにのんびりと歩き始めた。

その後、30分ほどで仕事は終わり、私は着替えるべく部室へと向かった。部屋に入ろうとしたその時。


「や、神童…ここまだ学校」
「抱きしめるくらい許してくれ。今日は疲れたから、充電だ」
「もう、仕方ないなあ」


室内から聞こえてきたのは、マネージャー仲間の1人と…拓人の声だった。思わず声が漏れそうになり、あわてて口を押さえる。
入れない。…私の入る隙なんて、どこにもない。
涙があふれてきて、たまらず私はその場を離れた。少しでも部室から遠ざかりたくて、闇雲に走った。

ああ、青春だねえ。
青春なんて大嫌いだ。




20130404
悲恋







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