短編 | ナノ


「はあ…」


吐息が白くなって冬の空へ消えていく。3時間目と4時間目の間の休憩時間、快適な暖房によって瞼が重くなってきた私は目を覚ますべくベランダへと出ていた。12月の寒空の下、屋外へ出ようなんて酔狂は私以外いないらしく、他のクラスのベランダに人影はない。誰もいないのをいいことに大きな欠伸を1つする。あー、眠い。


「不細工な顔」
「…ん?」


よく知った声がした、よーな気がする。


「まあ、幻聴かな…ふわぁ…ぁふ」


さっき見たとき誰もいなかったし。大体、人にこんなとこ見られたらいろいろと恥ずかしいし。


「おい、無視すんな」


幻聴じゃ、ない…だと!?
おそるおそる声のしたと思われる隣の教室のベランダを見ると、そこにいたのはわがチームメイトであり幼馴染である不動明王だった。


「なんだ、不動か」
「んだよその反応」
「だって、不動には昔からいろんな顔見られてるし。今更でしょ」


キーンコーンカーンコーン…


「あ、予鈴だ。じゃ、また部活の時にねー」
「…おい」


教室に入ろうとした時、不動がいきなり投げてよこしたのは小さく丸められたメモ。


「何?これ」
「授業始まったら開いていいぞ」
「…?うん」


後ろを向いた不動の表情を窺うことはできず、私は頭に浮かんだクエスチョンマークと一緒にそのメモをポケットにしまった。


「俺は、まだ見てねえお前の顔があるぞ」
「え?」


キーンコーンカーンコーン


「うわ、やばい本鈴っ!」


クエスチョンマークは増える一方だけど、とにもかくにも授業だ。


「…で、ここで余弦定理を使って…」


うわ…やっぱ眠い…。欠伸を噛み殺しながら必死で意識を保つ。
あ、そうだ、不動のメモ。
私はポケットからメモを出し、先生にばれないようこっそりと開いた。


『ずっと前から好きだ』


え?嘘、あの不動が私を…?
驚きのあまり授業中だということも忘れて固まった私は、こんがらがった頭で必死に考えた。
…とりあえず授業の後すぐに不動の元へ行こう。そして真偽を確かめなくては。



……くそう。



先を越されちゃったじゃんか。




131217

タイトルは造語です。






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