短編 | ナノ
「よーしじゃあ理科係、ノート配ってくれー」
先生に言われて立ち上がったのは半田くん。実は私の想い人だったりする。どれくらい好きかというと、教室を行ったり来たりしている姿をつい目で追ってしまうくらい。不自然に見えないように気をつけながら彼を視界に収めていると、彼の後ろの席、つまり私の隣に座っているマックスに声をかけられた。
「ねー桜、知ってる?半田って単純なんだよ」
「何それ。どういう意味?」
いきなり告げられた謎情報に、頭の中をクエスチョンマークが飛び交う。
「まあ見てなって」
意味深な笑みを受け、私は言われるがままに視線を半田くんへ戻した。彼はまだノートを数冊かかえていて、ちょうどこちらへ向かってくるところだった。私?と思ったけど、
「ほい、マックス」
違ったみたいだ。彼が横を通った時、
一番上にあったのは私のノートだった。
…あれ?なんで素通りしたんだろ。その疑問の答えはすぐに分かった。
「よくあるでしょ?そーゆーの」
マックスが呟いた言葉は私には認識できなかった。なぜなら、
「はい、四ノ宮」
彼の手に残った最後の一冊。それを彼の笑顔と一緒に受け取ることで精一杯だったから。
131116
好きな子のノートは一番最後
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