短編 | ナノ


部活帰り、俺は近所のスーパーの前で雷門中の制服を着た女子とばったり出くわした。


「あれ、鬼道」
「四ノ宮か。こんな時間に買い物か?」


重そうな買い物袋を2つも抱えた四ノ宮は、信号待ちをしている俺の隣に並ぶと、こちらを向いた。


「うん、今日はポイント3倍デーだし、5時からタイムセールだったから。鬼道は部活?」
「ああ」


すると、信号が青に変わった。


「四ノ宮、その袋、俺が持とう」
「え?いや、いいよー重たいし」
「重いから、だ」
「う……ありがとう」


半ば強引に四ノ宮から買い物袋を受け取ると、俺達は歩きだした。重そうに見えた袋は実際かなり重く、女子の力でこれを家まで持って帰ろうという四ノ宮はいろいろとすごいと思った。


「いつもこうして買い物をしているのか?」
「んー、まあね。うち共働きだから」


他愛のない話をしながら10分ほど歩くと、四ノ宮が立ち止まった。目の前にある、割と新しい一戸建てが四ノ宮の自宅らしい。


「着いたよー。ごめんね、わざわざ」
「いや、構わない。俺の家もこの近くだからな」


というか、俺の家はここから3分もかからない。こんな近くに住んでいたなんてちっとも気付かなかった。


「そうなんだ。じゃあ、今度ご飯でも食べにおいでよ、今日のお礼も兼ねて」
「ああ、そうだな」
「それじゃあ、また明日。ありがとう、鬼道」


四ノ宮が、笑った。
俺を正面からまっすぐ射抜く、気持ちがストレートに伝わってくる笑顔。
それを見た瞬間、俺の中の何かが変わった。



突然、溢れてきた温かい気持ち。


正体は分からないが、何故か大切にしなければならない気がした。




131009

最後が強引過ぎました。反省






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