短編 | ナノ


生活リズムの整った日々を送ることは大切。小学校時代も、そして中学校に上がってからも事あるごとに言われ続けていることだ。私自身も毎日大体同じ時間に就寝・起床するようにしているのだが、最近その習慣化した起床時間をずらした。1時間早くしたのである。いきなり切り替えたので、ここ数日授業中は専ら睡魔と闘うはめになっているのだが、そこまでして早起きをするのには理由があった。


「いってきます」


今日もあくびを噛み殺しながら家を出た私は、早朝の住宅街をのんびりと学校へ歩き始めた。河川敷沿いの道へ出ると、不意に後ろから声をかけられた。


「あ、四ノ宮さん。おはよう」


振り向くと、そこにはにっこり笑う狩屋くんの姿があった。


「おはよう、狩屋くん。今日も朝練?」
「うん。あ、やばい時間無いや。じゃ、また学校で」
「頑張ってね」


さすがサッカー部というべきか、あっという間に小さくなっていく背中に小さく手を振る。
私が密かに思いを寄せている狩屋くんは、毎朝この時間に一人でここを通る。彼と30秒足らずの会話をするためだけに私は1時間の早起きをしているのだ。1日30秒じゃ2人の距離は全く縮まない。これでは割に合っていないんじゃ、と思ったりもする。
でも、今はそれでもよかった。私にとっての2人きりの30秒は、ベッドの中の1時間よりはるかに大切なものなのだ。




130601

猫かぶり狩屋






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