チャーリーの主張
 あいつはクラスの中でも喋るのがめっぽう下手なやつだ。おかしなところに臆病で、生真面目で、かと思ったらぐうたらで、一人でのんびり時間を過ごしてる。背たけはいっちゃん低いわけでもないが、女の子と隣に並んでも頭一つ出やしない。クラスの中でも飛び抜けて変なやつだと僕は思う。そこで、それなりに口がまわればよいのに、ルイスは喋るのさえ、おかしなところでへっぴり腰だ。少なくとも僕は、あいつが女の子とまともに話しているところを見たことがない。女の子が近くにいるといい匂いがして、満たされた気分になることを知らないなんて、残念なやつだと思う。それだけじゃなく僕たちと喋る時だって、たまに、まったく言葉を忘れたように黙っているんだ。大方何か変なことでも考えているのだろうと思うが、僕とジョンが気の利くやつじゃなかったら、今ごろ蹴り飛ばされて、相手にされていないに違いない。

 ルイスは不思議なやつだ。あの時だって、前の晩の月が綺麗だったから写真を撮ったって、気さくなマイクがそれをクラスに配っていたのに、あいつは貰うだけありがとうと言って、皆の輪に入ろうとしないんだ。見ると、両手で写真を持ちながらも、それなんて目もくれずに、すこうし上の方を見つめてぼっと突っ立っていた。だからって(変なやつだとは思うが、)あいつが根暗じゃないのは分かってた。ルイスだって僕らには話しかけるし、相談もしあうし、どうでもいいことだって笑いあうんだ。友だちになれば、あいつはいいやつだと思う。だけどたまに、こうやって可笑しなことをする。皆でおしゃべりしていた方が絶対に楽しいと僕は思うのに、本当に不思議なやつだ。あいつだけに見えるあいつだけの空間がきっとあるんじゃないかって、この前、ジョンと二人で話したばっかりだ。

 そんなルイスが、何に興味があるのか分からない、むしろ興味のあることなんて無さそうなルイスが、恋をした。



「好きな子が出来たんだ」


 僕とジョンは腰を抜かすほど驚いた。何よりルイス自身からそれを聞かされたことにびっくりして、ルイスには悪いが、一瞬頭のネジが一本抜けたのかと疑った。僕らを騙そうとしてるのか、とも思った。だって、そうだろう、喋り下手のあいつが、女の子を生き物としか思ってなさそうなあいつが(これは言い過ぎかも、でもルイスだからきっと許してくれる)、頭の中のどこで種が蒔かれて、恋が芽生えたのだろう。思わずジョンと顔を合わせて、何事だとお互い目をぱちくりさせたほどだ。
 その時ばかりはルイスを疑った。けど、それでも、あいつが僕たちに言ってくれたことはすごく嬉しかったんだ。ああ、ルイスにとっても僕たちは仲の良い友だちだったんだって、ちょっぴり安心した。そしてルイスのたった一言で一喜一憂している僕自身に気づいた時、僕もあいつを慕っているんだって思うと胸がいっぱいになったんだ。ほんとうだよ。
 普段他愛のない時間ばかり共有している僕らだけど、ちゃんと心と心に糸電話が繋がっていて、内側まで共鳴しあっていたんだ。

 おめでとう、ついにルイスが、よかったね。
 それで、どんな子なの?

 嬉しさの次に気になるのは、確かにそこだった。僕らが一番気になること。ルイス以外の男には欠かせないパーツ。
 ジョンはにやにやしながらルイスを小突いたし、僕もこぶしをぶつけたりして促した。
 だけどルイスは、首を横に振ったきり答えてくれなかったんだ。
 さらに、あいつときたら、

「秘密を分け合うっていいね」

 と、また不思議なことを言うものだから(それも、見てるこっちが照れるくらい嬉しそうに頬を染めて!)、僕とジョンは再び顔を見合わせた。
 結局のところは、まあ、ルイスのことだろう、何か大事に大切に考えているものなのだろうと、二人で話してそういう結果になったんだ。
 まったく僕らはお人好しだ。



 それから、チャーリーとジョンがルイスの片思いの子に意外にも簡単に出会ってしまうのは、数日後のお話。



--
ルイスくんシリーズニ作目。


bkm
BACK TOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -