3
 


 俺はベッドの中でゆっくり目を開けた。
 奇妙なことかもしれないが、父母は魔女に殺されたのだ。
 記憶はそこで途切れ、病室で目を覚ますところからまた始まる。あの後恐らく気絶したのだ。
 発見してくれた方の話によると倒れていたのは俺だけ、だったらしい。本当に可笑しなことに、あそこの道路にたどり着いて魔女と対面したとき、車はもちろん父と母の姿も全く見当たらなかったのだ。消えた父と母は、俺の知らぬうちに交通事故で死亡となっていた。そしてこれも奇妙なことだがちゃんと遺骨もあった。消えた父と母のかわりにいたのは、あの魔女ひとり。あの状況で二人が死んだなら、どう考えても魔女が殺したとしか考えられなかった。

 医者も看護婦も学校の先生も友達も親戚も、みな口を揃えて交通事故なんて、かわいそうに、と俺を慰める。違うのに、俺は見たんだ、魔女が殺したんだ、と何度も言おうとしたが駄目だった。かわいそうに気が動転している、と更に同情の目で見られて言うのを止めた。皆が魔女の言いなりになっているように見えて仕方がなかった。
 魔女は嫌いだ。けれど魔女と同じくらい、父と母が許せなかった。絶対にいなくならないと約束した矢先に、あっけなく死んでしまったから。
 あれは幻だとか思い込んでいれば、少しは前向きでいれたのかもしれない。とたまに思い、すぐにその考えは消える。そんなに簡単なものじゃない。その証拠に、今でも他人が信じきれない自分がいる。



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