詰め合わせ 2011.10.27 Thursday 00:15 押さえきれなかったアリス(笑) 以下思い付き+詰め込み集 「アリスになら教えても良いですよ?」 ふわりと大輪の薔薇のように笑み、嬉しそうにひょいひょいと尻尾を揺らすその姿に、木佐はじりりと華奢なヒールの踵を後ろにずらす。 琥珀のような淡い色をした髪を揺らして、ピアスのあいた耳をピンと伸ばすその様は興味を持って欲しくて、構って欲しい猫の行動特性にも似て、気まぐれなそれに応えて今のうちに教えて貰う方が断然良いと思うけれど。 (近寄ったら離してくれないんだろうなぁ…) 内緒の話をするように耳を寄せた瞬間、引き寄せられて額辺りに口付けられるのは当たり前のような気がしてならない。 近寄ったら最後だと本能がその蠱惑的な空気に警鐘を鳴らす。 「さあアリス、どっちが良いですか?」 ここから抜け出す方法か、それともこのままティーパーティを続けるか。 「あーあ、珍しくお気に入りが出来ちゃったな。雪名は面倒くさいぞ」 愛情が、 なんて愉しそうに帽子屋が言うその向かいで、呆れたように溜め息をついて懐中時計の蓋を閉じた三月ウサギが先か、仕方がないとコツリとヒールが前に歩み出すのが先か。 愛情なんて要らないから、ここから出る術を教えて欲しい。 まぁ、あっちに帰っても俺が幸せになるなんて事はあり得ないけれど。 てゆか俺がアリスってなんだよ、歩きにくいヒールも気分をそのままに誂えられたような漆黒のヒラヒラしたドレスも気にくわない。頭の深紅の薔薇が滑り落ちないように気を配りながら満面の笑みで俺を待つソイツの顔を見ないように瞳を伏せながら踵を鳴らして歩く。 アリスに王子は居ない。 数刻前フラれた男の顔を思い出して、ツキリと痛む胸に気付かぬフリをしながら絡めとられるように腰に回された腕を牽制するように叩く。 「イヤ、だから俺男なんだって。」 「それが何か?愛しいに男も女も対象があります?」 「帰る方法教えてくれんじゃないの?」 「勿論、貴方に嘘は絶対つきませんよ。」 だから、愛してるって言っても良いですよね? なんて最上に甘ったるい笑顔で首に顔を埋めてくるそいつは間違いなく優しい嘘で慰めようとする王子だった。 「まーじで可愛いんだけど木佐さん、本気で帰したくないんだけどどうすれば良いかな!?」 「うーわ、マジでハマってるとか笑える。あの大嘘つきのチェシャ猫がねぇ、」 「イカレ帽子屋さんが言えることですかね?うーわーあのときの三月ウサギさん頭おかしくなったとか言った自分が頭可笑しいと思う」 「…本気でアリス帰してくるぞ」 「うーわー!?嘘です嘘です!お願いだから赤の女王とはまだ会わせないで下さいー!」 「しかしねぇ、本当に雪名、お前が欲しがるとは思わなかったよ。一番目、二番目とスルーで三番目、…ねぇ?」 「木佐さんが一番可愛いですよ。あのなんか背負った感じ、愛して欲しがりなのに絶対諦めてる。俺の事絶対タイプですよあの人。」 「知ってる。だから連れてきた。この面子での茶番も飽きてきたしな。」 「そうそ、俺もアイツと会いたいし。」 「うーわー、帽子屋さんが赤の人と取引してる時以上に表情崩してるの初めて見た」 「最初のアリスのお陰だろう?」 「さぁな、お前こそ時間気にしなくなっただろ時計のウサギさん?」 「二番がルーズ過ぎるからきっちりしてるのがバカらしくなってきた。」 「良い傾向だろ?俺らにも迎えに行く姫なんて居ない。居るのは迷い込んできたアリスだけ。なら寵愛するのも致し方ない」 「でた、」 「…かわらず狂ってるな」 「何とでも?帽子屋はマッドハッター。その役割は変わらない。」 恋愛も、物語も、 君と紡ぐなら何度でも。 「お早う双子」 『おはようアリス』 「…双子にしとくのは恐ろしいくらいの可愛さだな」 「アリスも人の事言えないよ?」「そうですよ、ひらひらのドレスも似合ってます」 「…あのね、褒められるのは光栄だけど嬉しくない。」 「ふふふ、可愛いよ」 「はい、可愛いです!」 「華のように笑むな。」 「…ねぇ、木佐さん、」 「ん?なに?律」 「迷ってはいけないのです。現実は辛いけれどこれはあくまでお伽噺。醒めない夢はないのです。」 「…。」 「そう。一番目も、二番目も夢見ていたくて、甘えていたくてダメだった。だから取り込まれて、王子なんて居ないのに王子になりたがったから狂ってしまった。」 「もしかして…」 「僕らはもう、駄目だけれど」 「あの人たちに甘えてしまったから助けてあげられないけれど」 「せめて貴方には」 「大嘘つきの愛したがり屋にも」『幸せになって欲しいから』 忘れないで、君が不思議の国のアリスだと言うことを。 「また余計な事を吹き込んだだろ律」 「何の事ですか?貴方に俺が望んだのは自由と考える時間。もう十分時は過ぎた。貴方に甘える時間もあと少しの間だけ。」 「…双子の片割れは楽しくは無かったかい?」 「とても有意義な時間でしたよ。あの人と同じ顔をした貴方が隣にずっといてくれましたからね。」 そう、きっと現実のあの人のように愛して愛して、壊れ物の様に大切に扱ってくれた。 けれど、 「あの人は俺を壊さんばかりに掻き抱いて、濁流のように飲み込みながら全身で愛してると伝えてくれていたのに漸く気付きました」 「…律…。」 「そんな顔しないでくださいよ、貴方もちゃんと好きでしたよ。嵯峨先輩。だけど、貴方とはお別れです。いつかまた会えるので、その時はちゃんと俺も貴方を愛せるように心の準備をしておきます」 つまらなそうにティーカップの持ち手に小指をかけ、そのままカップを傾けて琥珀色をした紅茶を真っ白なテーブルクロスにだばだばと溢しながらスコーンを手当たり次第に口に運んでいくその姿に苦笑する。 拗ねるとき、寂しいときのこの人の癖。 もう少し、貴方の事まで気を配れていたら現実のあんな結末にはならなかったかもしれないのに。 「…お前の回し蹴りは結構効いてたんだ。次にあったときは今以上にしつこく大切にするから」 「回し蹴り覚えてないかもしれないですけど」 「都合の悪いのは忘れるなんてお前調子良すぎるだろ…まぁ、良いか。熟睡は出来ないだろうけど次会うときに添い寝決行すれば良いし」 いたずらに笑いながら、それでも寂しそうに笑むその表情に胸がつまる。置いていってしまう現実を目の当たりにして、幸せだった日々が走馬灯のように蘇る。 「そんな顔するなよ。正統派クラッシックのアリスが泣くだろ」 「木佐さんには負けます」 「俺はお前の方が可愛いよ。大丈夫、また会えるさ。」 いがみ合ってたら笑えるな、なんて喉でくつくつわらうその声が愛しいと思った。 王子の居ない、夢の国は現実と一緒で、また代わり映えのしない日常が戻ってくる。 それでも過ぎる日々が辛くても生きる方が容易い。 また君に会えるその日まで。 なーんてね(笑) 夢の中でアリスになってたなんていう夢オチです。高律は嵯峨律の別れた直後あたりで、ゆききさは雪名に出逢う前の大昔の話で。 まぁ面識ないけど登場人物が普通に話してるのも夢だからです。 正夢とかと似た感じで。 「どっかでみたことあるんだよなぁ」 みたいな(笑) 楽しかったです(笑) ちなみにトリチアが無いのは私が書けないからです(中途半端でスミマセン) さぁ、勉強勉強! |