熱と快楽に浮かされて身動きがとれなくなった俺の上に覆いかぶさってきた。
シーツに半分ほど埋めている顔の間近に端正な瑛真の顔があった。
俺の耳に唇を寄せ、態と吐息がかかるように囁いてくる。

「大丈夫?」

大丈夫なもんか。

「凄く、辛そうだね」

「ヒッ!」

瑛真が頬にかかっていた髪を退けるために微かに掠めただけなのに、シーツの摩擦よりも凄い痺れが体を駆け巡った。

その僅かな触れ合いが、限界だった。

「体……熱い…」

上がる息の合間に吐息と変わらないような微かな声を絞り出す。

「熱いの?」

確かめるようにそっと俺の頬に触れてくる瑛真。

「本当、だね……」

つう、と俺の首筋に降りていく瑛真の冷たい指先。

俺の肌を楽しんでいるかのように、何度も首筋を撫でるその刺激が、理性の崩壊だった。

「…助け…て……」

「助け?」

瑛真がくれる微かな刺激だけじゃ、もう、ムリ。

「瑛真、触る、気持ち、……いい…」

「そう……」

すっと冷たい指先が首から離れた。

あっと、惜しむように瞳が追いかける。

「ごめんね、恵」

「?」

「花嫁じゃない人間には食事以外は触らないのがマナーなんだ」

恵は俺の花嫁になってくれないんだろう、と耳元で囁かれた。

マトモじゃなくなっている俺は、縋りつける唯一の瑛真に懇願するしかなかった。

「なる……はぁ……なるからぁ」

「なってくれるの?」

喜色をおびた瑛真の声がはっきりと今度は聞こえる。

「……早くっ…」

「じゃあ、誓って。恵は俺だけを見て、俺だけにその体を預けて、俺だけに愛を囁いて、俺だけに恵の血を与えて、俺の側を離れないで……」

俺の体に腕を絡め、抱き締める瑛真の顔をそろりと窺う。

「俺だけ……」

「?」

「瑛真は……誓わないの?……俺に……」

微かに思い出す結婚式のワンフレーズ。

幸せそうな二人が揃って誓い合っている、それ。

驚いたように俺を見ていた瑛真は花が綻ぶような笑顔になる。

「もちろん。もちろん、俺も恵に誓うよ。恵だけを見て、恵だけを抱きしめて、恵だけを愛して、恵だけの血を飲んで、恵の側を離れない。俺は、恵以外はいらない……」

真摯に語りかけてくる瑛真がカッコよくて、欲しくて欲しくて堪らなかった。

「瑛真、早く、…愛して……」

貪るように口付けられるままに瑛真に体を預ける。

服が脱がされ、肌に冷たい指が滑っていく。

甘い吐息が零れる。


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