“見つけた”


そう耳に聞こえたのか分からないけど、そう聞こえた声を聞いた時から五日後の満月の夜にその変に心地良い耳に残る声の持主が俺の前に現れた。

赤い瞳が鈍く輝き、それに吸い寄せられるように、ソイツが差し出している手に俺は自分の手を重ねた。
その手は冷たかった。

それから何故か記憶が無い。

気付いたら、ふかふかのベッドに寝ていた。

一平民である俺みたいなヤツが幾ら足掻こうと手が届かない立派な部屋が俺の目の前に広がっている。

何の夢だ、と思いつつも夢だから良いよな、って感じに興味を抑えられずに観察を始める。

手始めに自分が寝ているベッドをマジマジと見てみる。
敷いてあるシーツの手触りの良さが半端無い。
つるつるだ。
絹ってやつだよな、コレ。
それだけでも十分凄いのに、上を見ると天蓋が付いてる。
すっげ〜。
マジ、王侯貴族って感じ。

俺んちはそこそこ裕福な家だけど、ここまで凄いと俺って庶民だよな〜、と思う。

よしベッドはもういいや。

次行こう、次。

ベッドから降りるとちょ〜ふわふわの絨毯すげ〜!
俺はきょろきょろと部屋中を見る。
うわ、すっげ〜デカい暖炉、に天井からぶら下がってんのってアレだろ、シャンデリアってヤツ。まぁ、ここは寝室みたいだからキラキラの大きいヤツじゃないけど。

他に何か無いのかときょろきょろと部屋中を見るけど、これと言って何も無い。

目ぼしい物はもう無いな、と思ってこの部屋の外に出れるかなと唯一ある扉のノブを回してみるけど鍵がかかっているのか開く事は無かった。

カーテンを開けて窓も見てみるけど、一応開くみたいだけど、鉄格子が有るから出れないし、ちらっと外を見てみるとここはかなり高い場所らしくて暗闇だけだった。

退屈になった俺はベッドに戻り、ふわふわの枕に顔を埋めて、気持ち良さを味わう。

俺の枕、ここまで柔らかく無いけど、夢ってすげ〜。

それにしても俺の状況ってなんか、話の中って感じ。

えっと、アレだ、アレ。

好色な貴族とかヴァンパイヤみたいなヤツらに目をつけられて、攫われて、逃げられないように高い塔とかに閉じ込めるとかって内容の御伽話。

俺は男だし、これは夢だから、俺には関係無い。

お気楽にそう考えながら、体を預けているベッドのあまりの心地良さに俺は眠ってしまった。


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